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クラスメイトの何人かはすでに原っぱで花を採集していた。 いつもはポツンとひとりぼっちで立っているお地蔵さんの まわりが、今日はやけに賑わしい。 それもそのはず、数ヶ月前に学級会で原っぱの一角にチューリップを 植えることを決めたのだが、それがちょうどいい感じに咲いているのだ。 「啓太、いつもの場所に行こうぜ」 「文ちゃん、チューリップなくなっちゃうよ」 啓太は自分が植えた真っ赤なチューリップを大切に育ててきた、 学校帰りに、毎日のように寄り道をして、その成長の様子をひとり にんまりしてはお地蔵さんに会釈して帰っていた。 「いいから来いよ、また甘いのチューチューしようぜ」 「・・・・でも・・・」 文也は大きく手を振り、手招きしている。 (ま、いっか) 啓太は、いつもの場所に向かって駆け出した、文也は華奢なレンゲの 花を摘んで、スルッと花房をむいては、その甘い蜜を吸いはじめた。 文也にレンゲの蜜の吸い方を教えたのは啓太である。 啓太は、植物や昆虫が大好きで、これに関しては誰にも負けない 自信があった。 文也がニッコリ微笑んで美味しそうに蜜を吸っている姿を見て、 啓太は少し優越感を感じていた。 第一話「宿題」はこちら 一 夢 庵 風 流 日 記 桜の花が開くのを眺めながら桜和菓子をほおばりたい(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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