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「文ちゃん、宿題はレンゲの押し花にするの?」 「違う違う、オレはこれにする」 文也が指差す先には真っ白くてかわいい花が並んでいた。 「ん? シロツメクサの花?」 「違うよ! 啓太、よく見ろよ」 文也は小さな葉っぱを指して、啓太の目の前で四本の指を 大きく広げた。 「ああ、葉っぱのほう? クローバーだ、四葉?」 「うん、四葉のクローバーを探すんだ」 文也はしゃがんでクローバーを摘みはじめた。 一枚千切っては、これじゃない、さらに一枚千切っては、 あれじゃないと、ぶつぶつ言いながら探している。 どれくらい時間が経ったのだろうか、陽は少し傾き、 大きな桜の木の影は、背がのびてスリムになっていた。 「文ちゃん、どう? 見つかった?」 夢中で探している文也のまわりには、たくさんの三つ葉の クローバーが千切り捨てられていた。 啓太は、少しさびしくなり、そっとそれらを集め、袋に入れ始めた。 「おい、啓太、それ、三つ葉だぞ」 「あ、うん、知ってるよ」 「四葉じゃないと、幸運は来ないんだぞ」 「でも・・・三つ葉も葉っぱだから」 「おまえなあ、三つ葉じゃ幸運は来ない・・・」 啓太は文也の言葉をさえぎるように少し声を荒げて言った。 「四葉も三つ葉も、同じ葉っぱだから!」 文也は最初はきょとんとしていたが、啓太の言いたいことが わかったのだろう、バツが悪そうに、口笛を吹きながら お地蔵さんのほうへ走っていった。 第一話「宿題」はこちら 第二話「レンゲ」はこちら 一 夢 庵 風 流 日 記 花粉が・・・舞っています・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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