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『印度式』生活

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2006.07.22
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カテゴリ:本日の反省
夕方から父が飲み会に出かけて行った。
酒癖が悪いので、母が
「ちゃんと帰って来られよ。あんたばぁ飲まれなよ。他の人に飲ましてあげにゃいけんのよ。」
とくどくどしく言いながら見送る。

久々の晴れ間で、母は外で洗濯をしている。
しばらくして、一段落ついたのか、「お茶タイム!」と声がかかった。
電気ポットでお湯が沸く。
コーヒー、ココア、青汁の粉末にコポコポお湯を注ぐ。

母が昨日の話の続きを切り出す。私は黙って聞く。
ほとんどは繰り返しだけれど、一言言ったのは、
「まぁあんたが間に入ってちゃんと聞いとってくれたけん。あんたが解ってくれたから。ほんま、それじゃなかったら離婚じゃわ。」

…それは良かったと言うわけにもいかず、私はうっすら頷く。
30年経って、父とはやっぱり解り合えないということが解ったということは、母にとっても寂しいことなのだろう。
ひとしきり、愚痴、罵り、悪口。
父がいない時は、父の肩を持ってやりたいところだが、今は言わせておくしかない。尻馬に乗って、父への不満もいくらか漏らす。
そのうち気が済んで気の毒になってきたのか、
「まぁ、世の中で働いていこうと思うたら、ああじゃないといけんのかもしれんわ。お父さんもよう働いて…。」とか、
「あんたももうちょっと様子を見て、お見合いいうのもなんじゃから、働くいうんでもないけど、パートでもバイトでも、ちょっと相手を探す、言うか、そうでもないとなかなか出会いもないから。それで誰かええひと見つけて、結婚もして、子供も産んで、人並みのことは…」とか言い出す。
私はぼんやり蚊除けスプレーの缶を見つめている。

パソコンの前に戻って、作業をしていると、門柱ががちゃがちゃいって、玄関がノックされて、父が戻ってきた。珍しく23時くらいのご帰還。
立てないほどへろへろ、ということもない。
とりあえず、父も交えてお茶タイム。

数人での飲み会だと思って、ラフな恰好で出かけて行ったのだが、父によれば総勢17人の退職慰労会だったらしく、県外からもゆかりのある人が駆け付けてくれたらしい。
「皆が挨拶までしてくれて、記念品もくれて、こんな恰好でいくような雰囲気じゃなかったわ。結婚披露宴の祝辞みたいなもんで、ええのええの、言うとったけど。どうにかパートで来てくれんか、いうて上と交渉しよるとこじゃとか言うて。」
昨日のこともあったし、退職時には淡白な見送られ方をしたとしょげていたので、父は感無量だったようだ。
母も
「そりゃあ良かったなぁ、ほんま有難いわ。いろいろ大変じゃったもんなぁ。あんたはちゃんとするからみんなにもええように思われて。そんだけしてもらえりゃあ大したもんじゃわ。今日は天気も良かったし、みんなも助かっとるわ。お父さんの日頃の行いがええから…」
と褒めそやす。

家族とは不思議なものだ。
私はこの夏家から出てはどうかと母に言われて少し戸惑っていた時期がある。
一人暮らしには失敗した経験があり、場所は違えど気持ちがすっきり前を向かない。憂鬱だった。
結局は些細な偶然で、出て行き損ねて家にいて、そのせいで一家離散を免れたかのように見えなくもない。
家で居場所がなくなりかけた父は、仕事を真面目に続けたお蔭で、外では皆にお祝いをしてもらえて面目を取り戻す。
もちろん、父が40年勤め上げたからこそ、母もなんちゃって専業主婦、私もリタイヤ会社員のすねかじりでここまで来られたのだ。

エアコンは効いているのに、ばらばらに眠る両親の寝息を聞きながら、生きているからいいか、と思いつつこれを書いている。

何が幸せかなんて、結局はっきりとは判らないし、明日椰子の実が落ちてきて死ぬかもしれないけど、ぶつかりあったり傷つけあったりしながら、包帯やばんそうこうを探しているような、傍から見たら馬鹿馬鹿しいような毎日でも、それはそれでかけがえのない日々なんだろう。

分かり合えなくて当たり前な家族の姿を目の当たりにしつつ、神様がそう組み合わせた意味を、少しずつ知っていく二日間だった。

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Last updated  2006.07.23 10:18:29
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