ゆがんだ愛情表現(ドメスティックバイオレンス)とPTSD
今日、外来にPTSDを抱えながら40年を生きて、食道癌になったという男性がおいでになった。癌の治療について相談に見えたのだが、彼の話を聞いて、彼が自分自身への愛情表現の仕方を間違えて癌という子供を生み出したことが分かった。彼には2回の離婚歴がありその2回とも妻に暴力を振るった、いわゆるドメスティックバイオレンスによる離婚だったと言う。最初の離婚の後、(昔の私もそうだったが)アルコールに浸るようになり、ついに慢性膵炎をわずらい、とうとう昨年には食道の腫瘍を指摘されたという。アルコールの過剰刺激が食道ガンを引き起こすらしいと言う事は知られていることであり、また離婚や失業といった喪失の後に悲しみを紛らわすためにアルコールに頼る事も良くある話だ。しかし私には、彼の状況が、いわば過去の人生の歴史を自分の体で再現していると言う事が良く分かった。私にも離婚歴があり、またアルコール依存になりかけた経験がある。幼児体験としては、最愛の父親に合う事はできるのに、一緒に暮らす事ができないという、いわゆるダブルバインドを経験している。(私の父は、私に対しては「愛している」というメッセージを送りながら、実際の行動においては、なかなか合いにくる事も出来ず、社会的には私との親子関係を隠し否定していた)このダブルバインドのパターンは、私の人生にとって今日に至るまで、何度も同じような経験を引き寄せるという特殊な効果をもたらして来た。つまり、「愛する人の傍に居たいのに、傍にいる事ができない人を愛したり、現実に愛する人の傍に居る事が出来るようになると、無意識の内に自分でその状況を破壊してしまう」というパターンだった。食道ガンになった彼は、自分を愛して大切にしようとしながら、現実にはアルコールを過剰に摂取することで自分の肉体を痛めつけるというアンビバレンツな行動をしており、この行動は幼児期に親に殴られたという経験に由来していると理解できる。ーつまり彼の親は彼を愛していたにも関わらず、彼を殴るという形でしか彼に対する愛情表現ができない「ゆがんだ行動パターン」を持っていたのだ。この行動パターンを「ゆがんでいる」と言うのは簡単だが、私の幼児体験とその後の人生経験からしても、このパターンから離脱するのは極めて大変な事だとわかる。これが、家庭内暴力のある家庭に育った子供が捕われる、エネルギーパターンの罠である。このエネルギーパターンからの離脱に役立つレメディーというものがホメオパシーにはあると聞く。私はホメオパシーについてはほとんど実際のレメディーをしらないので、今日も彼にバッチフラワーレメディーをお勧めした。バッチフラワーレメディーは、飲んでさえもらえるなら、そして適切に選ぶ事ができるなら、PTSDからの回復にも役に立ちます。