喉のチャクラ、人智学的修練と八正道。
ルドルフシュタイナーの基本的文献に『神智学』と『いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか』という2冊がある。この後者の書籍には、現在一般にチャクラと呼ばれている「高次の世界を認識するための感覚器官」を育てるための具体的な訓練方法が述べられている。その中で、喉のチャクラ(16弁の花弁をもつ花のような形をしていると説明される)を育てるために育成する必要のある「8つの状態」というのは、日本人にはなじみ深い、お釈迦様の言う「八正道」そのものである。正見、正思、正語、正業、正命、正念、正精進、正定の8つの道が悟りへと至る道であると釈尊は説かれた。この8つの道を、シュタイナーは高次の世界認識を可能にする「認識器官」を育成するために必要な態度、生活習慣であると述べているのである。シュタイナーの言葉を引用して八正道を述べると以下のようになる。「正見」:私たちが外界から獲得するイメージの1つ1つに、特定のメッセージや、外界の事物に関する情報を見いだすように見る。偶然にまかせて意味をもたないイメージをつくりあげるのではなく、私たち自身が外界を忠実に映し出す鏡になるようにして、秩序だった概念を作り上げる。「正思」:どのようなささいな事柄であっても、根拠ある十分な思惟に基づいて決断する。どのような行為も、よく考え抜かれた根拠に基づいて行う。このための適切な思惟を正思惟と呼ぶ。「正語」:意味がある事、重要な事だけを話す。根拠のない事柄については、決して語らないようにし、話す言葉も多すぎたり、少なすぎたりすることがないように気をつける。「正業」:外に現れる行動を制御する。自分の行動が他の人の行動や周りの世界の出来事と調和するように自分の行動を整える。「正命」:人生全体を整え、自然や霊に従って生きる。過度に急いだり、怠けたりせずに調和的な生活を生み出すように健康を管理し、習慣を整える。「正精進」:自分にふさわしい努力を持続し、理想や人類の義務に関わるみずからの目標を立てる。そして自分の課題を理解し、自分自身の義務をより良いものに、より完全なものにするために努力する。「正念」:人生のあらゆる経験を宝物のように豊富に集めて、何をする場合でもこの経験の宝物に照らし合わせて検討する。どのような経験でも、たとえ失敗であってもその経験から可能な限り多くの事を学ぼうとする態度を保つ。「正定」:自己の内面に目を向ける習慣を身につける。自分自身と語りあい、自己の人生の原則を作ったり、検討したり、自己の義務についてよく考えたり、人生の内容と目標について熟考したりする。ルドルフシュタイナーは、これら8つの訓練を自らの『習慣』となるまで身に付けた時にこそ、私たちの「思いと言葉と行い」は「外界の事象と一致し」十六弁の蓮華(喉のチャクラ)はますます完全なものとなり成長する、と説明している。