自律神経免疫療法の本質とは。
昨日の講義録メモのつづきです。血圧の薬で血圧を下げるのは、「体が間違いを起こしている」という誤解によると私は考えています。もちろん、安静時の血圧が170、180と異常に上昇し続けているなら、一時的に降圧剤が必要になることもあるかもしれません。けれども、その血圧の上昇の本当の理由は「肉体的」あるいは「精神的」な無理から来ているのです。お薬を増やす以前に、『血圧上昇の原因となった「無理」はいったい何でしょう?』と患者さんに問いかけ、それを探る事が臨床医の務めではないでしょうか?私は、現代の日本で脳出血が減少した一方で脳梗塞が増えたのは血圧の下げすぎがその一因だと思っています。一人一人の個人の生活習慣や毎日の生活でのストレスを考慮しないで一律に血圧を下げたり、塩分制限をすることもしばしば間違った治療になり得ます。たとえば塩分制限も過剰に行われた場合、患者さんは気迫を失うばかりだったりします。神戸の島田彰夫先生は、授業で居眠りばかりしている学生さんたちに、朝1杯のみそ汁、または1杯の塩水を飲ませて、午前中の学生の集中力と気力が著しく向上したというお話を報告しています。(島田彰夫著「伝統食の復権」などにも書かれているお話)この季節、どこの耳鼻科でも内科でも抗アレルギー剤が処方される『花粉症』はここ15年来増加しています。この15年の花粉症の増加は、日本経済の豊かさと排気ガスの増量(硫化物は減少して光化学スモッグは起きなくなったが、窒素酸化物と炭酸ガスは、実は増えているのですという解説あり)によるものと推定できます。花粉症は粘膜に結合した汚染物質の排泄が必要だから生じているものですから、ステロイドを使用したり、抗アレルギー剤を使用したりしても、根本治療からは遠ざかるばかりです。そもそもリンパ 球優位の暮らしだからこそ、花粉に対して過敏な体質になって花粉症になるわけです。ですから、十分な運動を含む、皮膚粘膜の血流を保つバランスのとれた暮らしが必要になります。既に述べた癌の治療にしても、花粉症、喘息などにしても、時代の変化と病気の重症度の変遷をきちんと認識して対処する必要があるのです!!つまり、1、重労働からの解放、衣食住の改善などが『副交感神経優位の時代』を作っているという認識が必要であり。2、ガンや自己免疫疾患の軽症化(若年者に広く多発している)という事実があるにも関わらず、免疫システムを抑制する抗ガン剤の乱用やステロイドの過剰治療で本来治る病気が、治ることができなくなっているという事実確認が必要です。(会場からの自律神経免疫療法としての爪もみ治療の仕方の質問に対して)東洋医学的な治療は刺絡(しらく)治療を含めて、「少量の嫌なもの、嫌な刺激」を用いて副交感神経反射を誘発する治療だと思います。私としては、臨床的な細かい手技については、すべてを説明出来る訳ではないのですが、この原則から個々の治療手技を研究、発展させていって頂きたいのです。人体が交感神経と副交感神経のバランスがとれた状態に保たれるためには、『揺さぶり』が必要なのだと思います。『絶食療法、断食治療』もこの視点で理解可能です。☆K.M.先生(私の同級生のお医者様)の「安保先生、それでは自律神経免疫療法を日々の現場で患者さんに理解してもらって、その人の『無理』を見いだしてもらうようにする指針、決め手は何かありますか?」という質問に答えて。決め手は『生き方を見直すことだ』という方針をきちんと理解してもらう事です。実際のご開業の現場では、十分な説明の時間も足りないでしょうから、待合室に置いて、あるいは手渡しして、読んで頂くもので、良く分かる説明書きを作っておいたほうが良いのではないでしょうか?たとえどんなに優れた理論に接する機会があっても、本人が納得して本人の100%の意志でひたすらに行わないと回復はむずかしくなる。実際は、癌でもアレルギーでも迷う人はなかなか治らないんですね。言ってみれば人を迷いから脱却させるのが本当の『仁術』ですね。私たち医者が修行しないといけませんね。以上、2月6日東京で行われた安保徹教授の医者むけ講義記録の一部です。もう少しつづきます。