『治療の書』12
治療の書28ページから30ページ。『人の一挙手一投足、之全生の要求をもつ也。之死ぬこと忘れ生きてゐる理由なるべし。死にきるまで死ぬこと忘れゐるは自然也。死来るも慌てず、怯えず、又死にたくなしとか、何時死んでもよいとか、考へること無くただ生きてゐる也。人の造りし目的の為あくせくいのちけずること慎む可き也。死に際していのちをけづる如きこと更に慎む可きは勿論也。その故に最後の一瞬迄、活き活き生くる可き也。治療する者、このことに添ひ彼を指導す可き也。その故に治療する者にあって死ぬ可きもの無し、生ききる可きものにのみ会ふ也。人は死ぬと見、人は働くと見、人は食らふと見、人は背くと見、人は従ふと見、人は信ずべしと見、人は油断ならずとみるも、それぞれ見る人の立場也。人はその如きに非ず、ただ生きてゐる也。その生くるはらたきの鬱散が癇癪になり涙になり、又活動になり思索になり、結婚となり分娩となり成長となって一瞬も止まらず、生きって生くること終へる也。疲れて眠りを要求する如き也。ただ生くる也、活き活き生くる也。之治療する者の見也。』「生きって生くること終へる時、(死することただ)疲れて眠りを要求する如き也。」歩むべき道を歩み、使うべき体を使い切って「生ききった人」は、本当に眠るように旅立ちます。