来年出版される予定の「小児科診察室」(仮題)について。
アントロポゾフィー医学に基づく小児科関連書籍「小児科診察室」(仮題)について。2005年12月現在、国際アントロポゾフィー医学ゼミナールの主たる講師であり、ゲーテアーヌム精神科学自由大学 医学部門代表Michaela Gloeckler医師と小児科医Wolfgang Goebel医師の共著「小児科診察室」が、入間カイ氏の翻訳で出版されようとしています。現在、私を含む10人ほどの医師、助産師、オイリュトミー療法士がその翻訳書の監修をお手伝いさせて頂いています。まだ、正式な出版日までは決まっていませんが、2006年の4月までに出版される予定の書籍です。日本におけるアントロポゾフィー医学の入門書は、2005年に群青社から「シュタイナー医学入門」という書籍が出版されていますが、臨床の立場から書かれた一般向けの実践な書籍は、この「小児科診察室」が日本で最初の書物になる見込みです。日本ではシュタイナー教育は、かなり有名になってはいますが、その教育の基礎となっているアントロポゾフィーそのものは、日本人にとっては、まだ異邦の知識に近いものでしょう。ルドルフシュタイナーの仕事は哲学、教育、芸術、農業、医療などの諸分野に及びますが、医療の分野に関しての業績は日本では、いまだにほとんど知られていないのが現状です。彼が残した業績の多くは、彼の著作の難解さも手伝ってなかなか一般の人々には理解され難く、この状況は今後も長く続くと予測されます。しかし、彼の認識と、その認識に基づく実践が、教育の分野、農業の分野、医学の分野で実際の成果を見せていることは、無視しがたい事実であり、この3つの分野の中でも、特に関係深い『教育と医学』とが、「小児科診察室」の中ではその前半部分と後半部分を通じて統合的に説明されてゆきます。また、子供の発育と、発育にともなって出現するそれぞれの時期の発達課題や疾患経験が、アントロポゾフィーの視点から解明されつつ語られることで、シュタイナーの著作を読むだけでは把握しにくい、子供に則した実践的なアントロポゾフィーの視野を得ることも可能になります。『教育の本質は偏りを均衡化させることにある。どんな子どもにとっても教育は治療であある』という言葉が、医学の視点からも正に真実であることを理解可能にするすばらしい書物として、これから子どもを育てる親ごさんにはもちろんのこと、長くアントロポゾフィーを学び続けている方にも是非一読をお勧めしたい1冊です。