年上の友人からの手紙。
今夜は、あなたがまだ少年だった頃、私に聞いてくれた疑問に、ようやくですがお答えします。私は大変長い間、医者をしてきたので、ほとんどすべての医学的疑問にお答えすることが出来るのですが、あなたが私と同じような「生と死を統合する立場に立った医学」を学び始めてからは、まだ日が浅いので、今までこの答えを書き送ることは控えてきました。若かった頃のあなたは、医者としての英雄的な努力にひたっておられましたし、一時は道を誤って、世に言う「悪魔の誘惑」に惑わされかけたようでしたので、初めてお会いしてから長い年月が過ぎているとは言え、(当時のあなたは、まだ医者である父親に憧れている少年でした。)あなたにこのような話しを書き送ることが出来る日が来たことを私は心から嬉しく思っています。ここからはあなたが今学びつつあるアントロポゾフィー医学の用語も用いてお話しします。あなたの子どもらしい質問は「英雄色を好む」というのはどうしてですか? 英雄なら自分の欲望も討ち滅ぼせそうなのに、というものでした。私の答えは以下のとおりです。現在地上で生きている人間の体質と、人の本性(空)にとり、「窒素とそれに関連した物質」はまだ異物です。窒素が分子結合に加わることで、タンパク質の複雑な立体構造は形成されていますが、別の視点で言えば、本来は水と二酸化炭素、つまり水と空気と光だった物質が窒素とそれに関連した物質によって、タンパク質と呼ばれる、凝縮したエネルギー体に変形した状態に閉じ込められているとも言えます。タンパク質が良く燃焼消費された場合には、人体においても、水と二酸化炭素と熱と尿素窒素、尿酸などに分解されて肉体の外に排泄されます。そしてその状態になった時だけ、一度はタンパク質という牢獄に閉じ込められた空気要素、光要素、水要素、地上要素は4つの世界に戻る事が可能になります。収縮と拡散のリズムを繰り返すことこそが自然の摂理であり、宇宙進化を促すためのリズムです。一度個人のカルマの流れの中に収縮凝集した力が、核酸と結びつきながら拡散してゆくこと(男性がその精子を飛散させること)、つまりは「色を好むの現象」は、収縮と拡散のリズムが地上生命体としての人類の肉的器である「人体とよばれる分子器械」をただの器械ではなく、「カルマと結びついた浄化装置」に保つための、遺伝子を利用した宇宙規模での工夫の結果なのです。そして、あなたが最近気がついて私に書き送ってくれたように、地上で英雄と呼ばれる人は、その運命、カルマの結びつきと流れの中で、他の人々と比較してより強く明瞭に「私」に支配されている人です。たとえある人物の行為が人間同士にとって残虐に見えたとしても、その裏側にある神の意志は決して傷付けられることも歪められることもありません。あなたは私と同じ「私」に仕えています。その「私」は全能者自身の変わらざる本質であり、傷付けられることのない「空」と一つです。だからこそ、すべての恐怖を離れた見方だけが真実に近いのです。私はあなたを私の後継者の一人として育てます。恐れることなく、そして、畏れを捨てずに進んで行きなさい。その探求の道すがら、「畏れ」は、あなたにとっては、「嬉しき悦び」に変わるはずです。その道はかつて私も歩んだ道です。あなたがあなたの小さな自己判断を捨て去り手放して、本当に「私」の器になれば、同じ道を歩む私たちの医師としての一体感と共同的治療能力も強く確実なものになるでしょう。年経たあなたの友より。2010/02/17