東電福島原発の事故に関して:被爆防止の方法は?
この数日、患者さんから毎日原発事故に対しての心構えと対処方法を質問されます。以下がそれについてお答えした文書です。-------------------------------------------お問い合わせありがとうございます。先に添付されている2つの資料に目を通してください。特に「金沢大学医学部附属病院核医学診療科」が、以前発表した資料を良く読んで下さい。2つ目の添付ファイルは、この文書を読んで頂いた皆さんに、これから毎日良く食べておいていただきたい食品のリストです。今後原子炉の事故がさらに深刻な状態になれば、日本は、これから全土にわたって放射能で汚染される可能性に晒されます。その場合、特に問題になるのは、甲状腺癌の原因になる、放射性ヨードの甲状腺組織への蓄積です。原子炉事故で放出される放射性ヨードの半減期はおよそ8日と言われています。このため、大気中に放射性ヨードが濃厚に存在する期間に甲状腺に放射性ヨードが取り込まれないように過ごすことが重要です。添付した資料は、医学的検査において、血管内注射で放射性ヨードを甲状腺に取り込ませて、甲状腺の代謝と甲状腺における腫瘍の発生などを検査する放射性シンチグラムという検査に際して、『事前に食べないでおいて頂きたい』食品のリストです。つまり、静脈内に放射性ヨードを注入して、検査をする場合においてすら、これらの自然なヨード食品を常食していると、甲状腺に放射性ヨードが取り込まれなくなることが良く知られているためにリストされている食品表なのです。現在すでに原発周辺の住民にはヨウ化カリウム剤が投与されています。この薬剤は、原子炉爆発事故なのによる被爆前24時間から被爆直前までに投与された場合に有効な薬剤であり、被爆後の投与になると、治療効果が格段に低下する薬剤です。甲状腺ろ胞は、その内部代謝で甲状腺ホルモンの合成に必要十分なヨードが既に取り込まれていれば、それ以上のヨードを取り込みません。事前に非放射性のヨード(つまり普通のヨード)で体内で必要とされるヨードを飽和状態にしておけば、体内に内部被爆の原因になるヨードは取り込まれず、内部からの被爆を受けなくて済むという理論です。昔から地産地消と言われ、風土はFoodと言われています。海産物に恵まれた日本列島の住民は元々欧米人の2倍から10倍のヨードを常に食べてきた国民です。日本人が日本人らしく昆布で出汁を取った味噌汁を毎日1杯以上食べ続けている限り、日本全土が放射性ヨードに覆われても、その後に子ども達の甲状腺癌が増える可能性はほとんどないという事になります。乳飲み子が居る家では、昆布だしを入れたお吸い物を作って飲ませるか、母親が日に2杯か3杯の味噌汁を飲み続ければそれで良いでしょう。たとえ原子力発電所が、人間の愚かな智恵によって作られたものに見えるとしても、ある地域、ある国に原子力発電所が実際に形をなしたという事も、自然環境と同じく究極的には神様の御心のままだと言うことをほんの少しでもあなたの心に留めておいて下さい。神の平安があなたの心とともにありますように。Peace of I石川眞樹夫★放射性ヨードによる被爆を防ぐには、ヨード制限をするのではなく、逆に毎日きちんとヨード食品を食べることです !?! 読み間違えのないようにご注意下さい。(石川記)甲状腺疾患でのヨード制限と核医学診療金沢大学医学部附属病院核医学診療科◎ヨード制限の適応 ・甲状腺関連の核医学検査ならびに治療の際に,ヨード含有品の摂取制限を患者に指導する. ・我々の施設では,摂取率測定および機能亢進症の治療では1週間,甲状腺癌の治療では2週間のヨード制限を行っている.これは,前者では,ヨード制限不足は摂取率の低値から,窺い知ることができるのに対して,甲状腺癌の転移巣に131I集積がなくても,それがヨード制限不足によるテクニカルエラーなのか,病変の生物学的特徴を反映した所見なのかが鑑別困難だからである.仮に,血液あるいは尿の無機ヨードを測定しても,その結果が判明するのは投与後になってしまう. ・したがって,甲状腺癌の治療では,より厳格にヨード制限を指導している.また,ヨード過剰摂取の食餌歴がある場合,腎機能障害や甲状腺機能低下症では,ヨード禁止期間を延長する.◎ヨード制限の必要性 ・核医学診療で用いる放射性ヨード(123Iあるいは131I)はトレーサ量であり,物質量としてはごく微量である.これらは安定同位体の127Iと化学的性質が同一であるため,甲状腺あるいは甲状腺癌組織に取り込まれる. ・甲状腺癌治療の目的では,3700から7400 MBqの131Iを投与する.3700 MBqに含まれる無機ヨードの重量(物質量)はわずかに10μg(第一ラジオアイソトープ研究所からの私信)である. ・成人における1日の無機ヨードの必要量が100から150μgであるのに対して,日本人は1,000から4,000μgを摂取するといわれている. ・体内にヨードプールが過剰に存在すれば,物質量としてわずかの放射性ヨードは,ターゲットに十分到達できなくなる.これが,放射性ヨードの投与に先立って,食事のヨード摂取制限が必須な理由である.◎ヨード含有食品 ・我々の施設では,131I治療の場合,ヨード制限開始前に栄養士による食事指導を励行している.制限する食品の一覧を表に示す.主として,海藻類および回遊魚と貝である. ・伊藤病院(伊藤公一院長,東京都渋谷区)のホームページにヨード制限中の献立例が掲載されている.外来患者にとっては,非常に実利的な情報である.●コンブについて ・米国でのヨード摂取量は1日1,000μg程度であるが,日本人は多くのヨードを主に海藻類から摂取する.とりわけコンブは,乾燥重量の約0.2%から0.3%のヨードを含有する1).すなわち,弁当などについてくるコンブの佃煮2-3枚で15,000μgものヨードを摂取することになる.また,コンブでだしをとる場合,だし汁には20%から35%のヨードが溶出する2). ・料理の本を参考に計算すると,5人前で,水1Lに対して,20gのだしコンブを用いれば,みそ汁1人前で3,000μg程度のヨード含量となる.1杯のコンブの入った吸い物には,10,000μgのヨードが含有されるとの報告もある3).コンブはそれ以外の海草類と比べても圧倒的にヨード含量が多いため,コンブに関しては,特に慎重な食事指導が必要と思われる. ・コンブだしは,外食の場合何に入っているかわからないため,制限期間中は可能な限り,外食を控えてもらうしかないと考えている. ●昆布エキス ・コンブだしと並んで食品への混入頻度の高い物質として,昆布エキスがあげられる.インスタントみそ汁,たとえば「あさげ」,「ひるげ」,「ゆうげ」(以上,永谷園)や,だし入り味噌「料亭の味」(マルコメ)やだし入り醤油には無論含まれている.また,カップ麺,たとえば「どん兵衛」(日清食品),「赤いきつね」(マルちゃん 東洋水産)なども同様である.また,合わせ調味料のSBドライカレーの素やSBガーリックライスの素にも昆布エキスが含まれている. ・さらに,予想外な飲食物に添加されているとの患者情報が徐々に寄せられている.「十六茶」は,十六種類の自然素材のブレンド茶としてアサヒ飲料から販売されているが,この十六の成分の一つが昆布エキスである.したがって,十六茶は銘柄指定で制限品目としている.スポーツ飲料では,ポカリスウェット(大塚製薬)とアクエリアス(コカ・コーラ)が双璧であろうが,このうちアクエリアスには昆布エキスが含まれている.これなどは,説明に際して銘柄指定では,かえって混乱を生じるため,スポーツ飲料全般を禁止せざるを得ない.また,一部のヨーグルトやプリンには,とろみ付けのために寒天が添加されていることがある.グリコのヨーグルトが,その一例である. ●タラ(鱈)について ・我々は,ヨード制限中にタラを食べたために,131Iの治療効果が不良となった26歳の男性甲状腺機能亢進症々例を経験した. ・外来で,治療計画のためにおこなった123I甲状腺摂取率測定では,24時間値が44.5%であったが,1週間後の入院治療時には131I摂取率が23.9%と低下し,有効半減期も1.6日に短縮した.治療直前の食事内容を検討したところ,タラが原因ではないかと疑われた.そこでタラを摂取する前後でヨード摂取率が変化するか否かをタラ負荷により検討を行った.タラを食べる前の123I摂取率は37.9%であったが,タラを負荷した後の123I摂取率は17.6%であり,有意にヨード摂取率が低下したと判明した.この経験から,タラも制限品目としている. ●塩について ・欧米では,ヨード欠乏による甲状腺疾患(甲状腺腫)を防ぐため,ヨードを添加した食塩が普及している.そのため,欧米の成書では,塩分の強い食品,たとえば,ポテトチップス,ナッツ,サラミ,ベーコン,ソーセージなどもヨード制限品目として挙がっている4). ・同様にピザやパンも市販品は避けて,ホームメイドを薦めている.我が国では,一般に流通している食塩は,ヨードを含有していない.しかしながら,輸入食品に関しては,上記の品目には注意する.◎ヨード含有薬品 ●成分にヨードを含有する薬品を一覧表にまとめた.”飲み合わせ”に遭遇する臨床的な確率の高い薬剤は,ヨード造影剤,殺菌・消毒用ヨード製剤,総合感冒薬(ダンリッチ)であろう.また,甲状腺ホルモンを含む薬剤,たとえば,乾燥甲状腺(チラージン ,チレオイド),レボチロキシンナトリウム(チラージンS),リオチロニンナトリウム(チロナミン,サイロニン),更年期障害治療薬(メサルモンF)もヨード制限中には,中止する必要がある.◎最後に ●ヨード制限を厳密に実施するためには,具体的に制限品目を明示しなければ,診療の結果に大きな影響を及ぼすことになる.我々は,ヨード制限不十分によるテクニカルエラーを一度ならず経験してきた.その経験を開示することで,読者諸氏の日常臨床に役立てば幸いである.本項で述べたヨード含有食品は,流通する食品すべてを検討した結果ではなく,ヨードの含有が明らかな物を個別にピックアップしたに過ぎない.したがって,これら以外にも思わぬ食品にヨードが含まれている可能性がある。 ●もし,この他にもヨードの含有量が多く注意すべき食品があれば、教室のホームページあるいは下記のメール宛にご連絡頂ければ、知識の共有ができるであろう.【参考文献】 1. 土屋武彦:チェルノブイリ原発の事故に思う 日本ではコンブを食べたら? Isotope News?1986年8月号:22-23, 1986 2. 桂英輔,中道律子:日本食品中のヨード量.栄養と食糧12: 342-344, 1960 3. 山本通子,長滝重信,尾形悦郎:日本人のヨード摂取量.医学のあゆみ?108: 53-56, 1979 4. Hurley JR et al: Treatment of Thyroid Cancer with Radioiodine [131I] :?Diagnostic Nuclear Medicine. ed. Sandler MP, et al. 3rd edition, vol 2, pp959-989, Williams & Wilkins, Baltimore, 1996.★ここから下の添付ファイル図は、食べて欲しい食品のリストになります。(石川記)