新元素名称案は「ニホニウム」。
113番の元素は、日本の理化学研究所の研究グループが発見して、2015年12月30日に新元素と認定されました。それで、理研のグループに元素の命名権が与えられ、理研は名称案と元素記号案を出しました。名称案は「ニホニウム」、元素記号案は「Nh」。なぜ、ニホニウムで、ニッポニウムではないのか?それは、混乱を避けるために正式でなくても一度つけられた名前は使うことはできないことから、ニッポニウムという名称の元素はつけられないからなのです。以下は、梶雅範, 吉原賢二, "小川正孝─新元素「ニッポニウム」の発見者" サイエンスネット No.19 pp. 2-5 (2003)の出典によります。今回、新元素への命名権を日本で初めて得ましたが、実は命名したのは初めてではありません。それは小川正孝(1865-1930)によるニッポニウムの研究です。1908年、小川は原子量が約100の43番元素を精製・分離したと主張し、ニッポニウムとして発表しました。しかし他の誰も結果を再現できず、その信頼性は揺らいでいきます。それから29年後の1937年、エミリオ・セグレが米国の加速器を使って43番元素を作り出しました。ニッポニウムは幻となり、43番元素は1947年にテクネチウム(Tc)と命名されたのです。実はこのテクネチウムに安定元素は存在せず、小川の方法では見つかるはずがなかったのです。では小川は全く間違っていたのでしょうか?小川の死後、研究資料を詳しく調べると、精製・分離したその物質はテクネチウムと化学的性質が似ている周期表直下の元素、レニウム(Re 原子番号75、1925年に独のワルター・ノダックらが発見)であることが判明しました。小川が1908年に新元素を見つけていたのは事実だったのです。他方、「ジャポニウム」がいいという意見もありました。元素記号は「Jp」。今までの元素記号には、「J」が無かったので、これでも良かったかも。でも、「にほん」と言うのは純粋な日本語なので、世界中に母国語の読み方が広まるのが、やっぱり、いいかも。