極東の隣人はいまや世界注目の的だ。ピョンヤン(平壌)生まれの知人によれば、美しい柳の街路樹はいまも美しく、この季節、初秋の風にそよいでいるのだという。北東アジア一帯の地図を南北逆にしてあらためて眺め見る。地下核実験が行われたとする咸鏡北道吉州郡豊渓里は日本海をはさんでおよそ800キロ南東方向に壱岐の島々、そして米子松江があり、首都ピョンヤンまでは400キロ南西という位置関係になる。日本海を内海とみれば、対岸に秋田、新潟、鳥取、米子、益田、萩、下関、福岡という日本の諸都市がならび、大韓民国・釜山(ぷさん)から北下すれば、ウルサン、ウルジン、カンヌン、コソンそしてウォンサン(元山)、フンナム(興南)ときて、ここで北緯40度線をまたぐ。朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮にはいるのは38度線をこえたコソン(高城)からだ。このフンナムからさきはホンウォン、タンチョン、キムチェクとつづく。舞水端と書いてムスタンと発音する岬を越えるとオデジン(漁大津)とチョンジン(清津)のふたつの海湾都市がある。この一帯は深海が大陸ちかくに迫ってきているから、軍港としておそらくは最適だろう。さらに北下すれば北朝鮮の最北端の港はラジンとソンボンだろうか。ソンボン(先峰)から50キロ海沿いに行くと、そこは北緯42度10分、ロシアと中国の国境地帯である。ソンボンから陸路川づたいに内陸部へ向かう人民道路をはしると、やがてトゥーメン(トモン=図們)という中朝国境の町に至る。ここには一種の自由市場があり、中国人と朝鮮民族が自由に行き来し生活している。歴史的に見ても軍事的に見ても、かつて中国人民解放軍兵士は朝鮮人民軍兵士と共に旧日本軍と戦った。かれらはいまも「戦友」で「同朋」で有るだろう。わたしはいまこのソンボンの山中を登場人物に歩かせているわけで、物語の中で、彼は国境越えをしてロシアの豪雪地帯へはいりこむ。もっとも美しく神々しい、かのアムールトラの棲息する一帯である。
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Last updated
2006.10.18 12:39:40
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