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カテゴリ:経済問題
前回(1日)更新から、再び慌ただしくなってきました。今日(3日)はTUIK(トルコ統計庁)インフレ率を発表し、それに伴い国家公務員給与と年金の引上げ幅と額が決まりました。また、年始からガソリンなどの値上げも行われていますので、国民の窮乏化が一層明確になりました。近づいている統一地方選挙に悪影響を及ぼさないように、それを煙幕(=社会的事件)で隠す(=関心を経済から逸らせる)ためではないかと思われるくらい、いろいろな事件が起こっています。
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前々回に5つの事件を紹介しまいた、それは、 1 ジャン・アタライTIP(トルコ労働者党)国会議員に関する2回目の憲法裁判所判決に対する第13イスタンブル重罪裁判所の反抗 2 最低賃金の発表 3 FETO構成員容疑で警察関係者445人の解任 4 スィナン・アテシ前民族主義者協会会長殺人事件に関する1周年目における動き 5 トルコ・スーパー・カップ(トルコ版サッカー天皇杯?)のサウジアラビアでの決勝戦の延期 というものでした。 今回は、 1 1月1日の「パレスチナ支援集会」で、トルコ憲法上認められない「カリフ制の復活」を求める行動があり、参加者同士で暴力沙汰が起こった 2 ジャン・アタライ国会議員に対する個人の権利侵害に関する2回目の憲法裁判所判決に民事刑事最高裁判所は再び従わず、「憲法裁判所判決は法的に無意味」とする声明を出した 3 2023年12月及び通年のインフレ率と、公務員給与及び年金の引上げ率(及び支給額)の決定 4 過去3年分の納税者番付発表。3年全てで、セルチュク・バイラクタル氏(エルドーアン大統領の娘婿)が納税額トップ。2022年(最新)では、納税者トップ100人の内、76人が匿名を希望した。 5 エルドーアン大統領がスーパー・カップの中止(延期?)事件に関して、「トルコと友好国(!)サウジアラビアとの関係進展を妨害するためのサボタージュが行われた」と非難した という事件、出来事がありました。 前回の積み残しの内の「最低賃金」は極めて明確で49%アップの17,002リラになったというものです。もう一つ加えるとすれば、昨年までの数年間は7月にも(年2回)改定がありましたが、今年は7月の改定はないということが決まっています。つまり、今年年末までに、最低賃金は最低でも40%の価値を失うという意味になります。より正確には、所得税の適用税率が段階的に上がりますが、最低賃金に対しては昨年よりも高い税率が適用され、手取り実額は更に減ることになりそうです。なお、社会保障・労働大臣は、共同記者会見で「政府、使用者及び労働者の3者の合意」と発言しましたが、同席していたテュルク・イシ(トルコ労働組合連合)の委員長が「18,000リラ、7月の改定が最低ラインあり、私は同意も、署名もしていない」と、3者の合意であることを否定しました。 最後のスィナン・アテシ前民族主義者協会会長殺人事件は、昨年12月30日で事件発生後丸1年になりましたが、収監中の容疑者は未だに起訴されていません。しかし、起訴状に様々SMSのやり取り記録が加えられ、犯人が1年以上前から暗殺の準備をしていること、警察、国家諜報庁(MIT)から情報をもらっていたことが明らかになっています。そして、“この事実”を報道した記者が逮捕・収監されるという事件も発生しています。MHP上層部にも捜査の手が及ぶ可能性があるという点で、共和同盟内(AKPとMHP)の駆け引きの存在も指摘されています。 ここからは、今年1月1日以降の新しい動きをいくつか紹介します。 1 1月1日の「パレスチナ支援集会」で、トルコ憲法上認められない「カリフ制の復活」を求めるシュプレヒコールが行われ、プラカードや旗が掲げられるという状況に、トルコ警察は全く何をしませんでした。ここまでは、「合法ではなくても、想像の範囲内」ということですが、アタテュルク派?の青年が、「カリフ制の復活」を求める旗を振っていた中年男性と口論となり、同男性を殴ったために警察に拘束されました。これもここまでは当然のこと(?)ですが、その後、警察に拘束されていた青年を別の青年が殴るという事件がありました。負傷の程度としては、中年男は鼻血を流していたので殴った青年より深刻な可能性はありますが、「中年を殴った青年は逮捕・収監され、その青年を殴った別の青年はおとがめなし」でした。そのため、野党を中心に、“1度殴っただけで、全ての人を収監するのか。その青年を殴った別の青年は拘束もされていない”と警察対応の恣意性を批判しています。なお、警察は“最初に暴力を振るった青年は、ヨーロッパで左派組織のデモに参加していることが判明した”という声明を出し、「最初は収監する理由はなかったが、あら捜しをした結果、収監すべき理由を見つけた」と自白したような結果になっています。 2 前回紹介しました「同じ事件(ジャン・アタライ氏が国会議員当選後も収監が続いている状況)に対する2回目の憲法裁判所判決を、第1審裁判所(第13イスタンブル重罪裁判所)が再び無視して、判断を民事刑事最高裁判所に委ねたという事件」の続きで、今日は、民事刑事最高裁判所から「憲法裁判所の判決には法的意味はなく、ジャン・アタライ氏は収監を継続すべき。そもそも、トルコ国会は直ちにジャン・アタライ氏の国会議員資格はく奪宣言を行わなければならない」と、民事刑事最高裁判所は憲法裁判所判決を無意味であると指摘することによりトルコ憲法に従わないことを宣言したとともに、司法機関が立法機関に命令するという2重の憲法違反を行う声明が出されました(形式的には民事刑事最高裁判所の決定(判決)ですが、与党関係者以外であれば、野党関係者でない普通の法律家でも、「これは法律的な判決(決定)ではなく、これこそが裁判所の政治的宣言であることは明らかである。憲法を事実上停止させる、司法機関によるクーデターである。」と指摘しています)。いつも紹介している解説者は、「“強権的政権が政権を執っている疑似民主国家”から“プーチン型独裁国家”に完全に移行した」と指摘するとともに、「来年3月の統一地方選挙も実施されない可能性が出てきた。もし実施されても、正当な結果が確保される保証はどこにもなくなった。そもそも5年前に、同じ大封筒から出てきた2つの小封筒のうち、“イマムオール大イスタンブル市長が最多得票した大イスタンブル市長選挙の投票(小封筒)は無効とし、一方で、AKP候補が最多得票した区長選挙の投票(小封筒)は有効とする”という判決(決定)を出したのは高等選挙委員会(YSK)であり、来年3月の選挙で公正な判断が下される可能性は極めて低い」とも指摘していました。事実上、エルドーアン大統領、あるいは共和同盟の支配下にある民事刑事最高裁判所及び高等選挙委員会(法律上は、選挙に関する最終決定機関)が、このような明らかに非常識な行動(不合理な判断)を行っている以上、現在のトルコを「法の支配の理念を受け入れている民主主義国家」と認定することは完全に不可能になったと言わざるを得ないという指摘であり、「今後、欧米諸国はトルコをロシア、中国、あるいはアラブ諸国や中央アジア諸国と同一のカテゴリーで取り扱う」、そして、「唯一、トルコがロシア・中国連合に完全に取り込まれないように監視・牽制するためだけに、NATOに留まるように関係を維持する」とも指摘していました。この事件は日本では全く報道されていないかもしれませんが、いつも紹介している解説者の指摘どおり、「トルコ共和国史上に残るターニングポイント」になる、つまり、トルコ政治版の東郷ターン(敵前大回頭)が行われたことになる可能性が大です。(ここで言う“敵”は“民主主義国家であるトルコ共和国”となると考えます。) 3 今日、トルコ統計庁(TUIK)が2023年12月及び通年のインフレ率を発表しました。いつもどおり?、3つの組織が出している数字を紹介します。 12月(月間) 通年(対前年同月比) 独立経済学者グループ 4.12 127.21(%) イスタンブル商業会議所 3.52 74.88 トルコ統計庁 2.93 64.77 シムシェキ国庫・財務大臣は「政府目標であった65%を下回った」と自画自賛しましたが、真実は、「TUIKが政府目標よりも低い数字を作成、発表しただけ」ではないかと思われます(最低賃金の引上げ幅と公務員給与の引き上げ幅も、偶然にも?ほぼ完全に一致しています)。いずれにしても、今年1月からの公務員給与、年金(元公務員、元民間企業・自由業)の上昇率、最低支給額は次のとおりとなります。 改定率(%) 最低支給額(TL) 公務員給与 49.25 30,910 年金(元公務員)49.25 14,739 年金(その他) 37.57 10,317 今回は非常に長くなってしまいましたので、ここまでにします。4と5は共通点もある、重要な事件と思われますので、次回、紹介したいと思います。
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Last updated
2024.01.04 13:04:19
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