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今回(4日)は、前回(3日)、紹介できなかった詳細について紹介します。今更ながら、DEMのイスタンブル選挙における重要性とその背景、そして、AKPが、より正確にはエルドーアン大統領の政権運営手法?について紹介します。
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まず、DEMの対応に関する分析を紹介します。前回紹介した動画の中でメトロポ(-)ル社社長は「DEMが大イスタンブル市長選挙の候補者としてデミルタシュ女史(収監中のデミルタシュ元HDP共同党首の妻)を指名しなかったことは、DEMが本気でイマムオール大イスタンブル市長を落選させるつもりがないことを示している」と指摘していました。その心?は、「もしもデミルタシュ女史を立候補させた場合、DEM支持者のほとんど全てと、それどころかCHP支持者などからも広く支持を集め、イマムオール市長の得票が大幅に減り、ほぼ100%、クルムAKP候補の得票を下回る」ということだそうです。実際、イスタンブルにおけるDEMの得票率は11~12%と見られていますが、DEM候補の副党首の一人の予想得票率は6%に達していません。つまり、本来のDEM票の5~6%ポイント(約半分)はイマムオール市長に流れていると見られます。なお、「DEMがデミルタシュ女史を立候補させなかったのは、CHPとの関係を考慮したのでなく、カンディル(=PKK 本部)とDEM執行部の一部は、デミルタシュ家(=デミルタシュ夫妻)のDEM及びクルド系住民への影響力が大きくなることを望んでいないためである」という分析もあります。 次に、エルドーアン大統領が今回の選挙を、特にイスタンブル、アンカラ及びイズミルの3大都市をはじめ、大都市では特に、非常に危険な状態にあると考えていると見られています。また、YRPが得票率を大きく伸ばしていますが、そのほとんどは元々AKP支持者であったと考えられているため、「AKPがYRPと選挙協力を行わなかったことは、エルドーアン大統領の大失敗である」と同社長は指摘していました。いつものこと言えばいつものことですが、エルドーアン大統領の選挙手法は、「国家機関と政府予算をフルにAKPのためだけに投入する」、「支配したマスメディアをフルに活用する」というものです。今回の選挙でも、任命制の県知事や郡長(市・区レベルを管轄する内務省の役人)やジャンダルマ(内務省軍)の地区司令官に、AKPの候補者と一緒に選挙宣伝を行わせ、それをジャンダルマや県庁のホームページなどにアップさせています。トルコでも憲法上は「国家機関やTRT(トルコ国営放送)も全ての政党に中立である」ことが求められていますが、完全に無視されています。具体的には、「TRTはエルドーアン大統領やAKPの候補に関しては、通算で何百、何千分も放送していますが、CHP(やその他の野党)及び同候補者に関しては1分も放送してない」とオゼルCHP党首は主張しています。また、CHPなどの野党が有料の選挙広告を行おうとしても、全く受け付けない報道機関が20社近くあるとも主張しています。以前も紹介しましたが、これ以外では学校教員、イマム(モスクで勤務するイスラム僧)もAKPとその候補の宣伝を行っていると言われています。その結果、公正な競争は全く行われておらず、結果として、AKPは本来あるべき支持率をはるかに超える得票率となり、そして、当選者も多数出すという結果になっています。反政府系の情報、つまり真実により近い情報が容易に入手できる大都市では、エルドーアン大統領、あるいは政府に対する批判(特に年金問題)がある程度起こっていますが、情報統制がしっかり行われている中央アナトリアを中心とする農村部(ただし、トルコ南東部をはじめとするDEMが圧倒的に強い地域は除く)では、今回の選挙でもAKPが圧倒的な支持率を得ることが確実視されています。 参考までに、インフレ率についても紹介します。投票前の最後の発表であるため、当然ながら低い数字になっています。 前年同月比 前月比(%) TUIK(トルコ統計庁) 67.07 4,53 ITO(イスタンブル商業会議所) 76.58 4.07 ENAG(独立経済学者グループ) 121.98 4.32 なお、インフレ率とは直接関係ありませんが、先週木曜日に、エルドーアン大統領は「最低年金額を月1万リラから(飢餓水準である)1万7千リラに引上げるためには、国家公務員の半分に給料を払わないことが必要になる。」と、現役の労働者と年金受給者の間に対立を煽る発言をしましたが、翌日の金曜日には、「野党はトルコ経済が崩壊の危機に瀕していると言っているが、トルコは2023年も4.5%の成長を続けている」と実績を誇る発言をしています。野党は、「(事実だとしても)ほんの一部の人だけがトルコ経済成長の恩恵を受け、労働者や年金生活者には全く無関係である。」と、所得の不平等を批判しています。これもある程度事実と思いますが、いつも指摘していますが、「インフレ率を低く発表しているため、その結果、成長率が高く見えているだけ」が、真の理由ではないかと思います。実際のインフレ率が100%で、嘘の発表が70%だとすると、一昨年のGDPが100で昨年が200だった場合、本当は、実質成長率は0%(200÷2=100)ですが、17.65%(200÷1.7=117.65)成長したように見えることになります(厳密には消費者物価指数とGDPデフレーターは別物です)。したがって、TUIKが発表した成長率も事実からは遠いものと考えられます。たとえ、傾向として昨年のトルコ経済が一昨年と比べて良い方向に行っていたとしても、「インフレ率が70%弱で、成長率が4.5%」を前提としたトルコ経済分析の詳細は全く無意味と考えられます。その証拠に?、今日もトルコ・リラは史上最安値(対ドル、対ユーロなど)を記録しています。
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Last updated
2024.03.05 17:39:44
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