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テーマ:イタリアの美味しい話(706)
カテゴリ:イタリアの食べ物
"pasta al filetto"
これはナポリ料理のパスタで、一見フィレ肉を具にしたパスタと思わせつつ実はトマトの果肉(filetto di pomodoro)が具でした、というシャレらしい。なんか書いてて恥ずかしくなるほどしょうもないけど、貧困で肉など食べられなかった時代に、料理名だけでもリッチな気分を味わおうとしたのか? 作り方は、基本は缶入りの皮むきトマトの水煮で作るトマトソースと大体同じ。違うのは生のトマトを使うところ、中の種のぐじゅぐじゅを取るところ、炒める時間が短いところ。 種を取ると、すっきりした果肉の歯ざわりのいい部分だけが残るから「filetto」なのだ。 この料理のおいしさはやはりナポリ付近でとれる甘くてうまいトマトのおかげ。南イタリアの太陽と乾燥した空気の賜物か。夏にイタリアでしか(いいものは、だけど)食べられない一品。 夏にイタリアに来たらぜひ味わって欲しいものだが、残念ながら普通はレストランのメニューに見つけることは難しい。あっても缶のトマトを使っているかもしれないし。ナポリだけに、だまされるかもよ。 イタリアではトマトは、丸いものにせよ長いものにせよ赤く熟して売ってるものと、青いままのものがある。赤いのはとても甘く、普通は調理用に使われる。青いのはあっさりした味とさくっとした歯ざわりで、サラダ用。私は赤いのが好きでサラダにも赤いのを使う。 で、8月から9月にかけて、イタリアの、特に田舎の、お母さん、おばあちゃんたちは、1年分のトマトの瓶詰めを作る。皮をむくなどの処理したトマトをビンに詰めて、湯煎で殺菌して出来上がり。これを一回料理するごとに一つ開けて、パスタのためのトマトソースを作る。 この生トマトの瓶詰めと同時に、鍋で凝縮させたピューレも作って瓶詰めにする。これはラグー(トマト煮込み)用。 年に一度この時期しか使わない大きな鍋と、大きなガスコンロを使う。ガスコンロは日本の町内会の屋台で使うようなやつ、と言えばお分かりだろうか。これが各家庭にある。でも若い所帯なら実家で全部作ってくれるので、全ての家庭にあるわけじゃない。 夏にスーパーに行ったら、空のビンとか、これ用の道具が1コーナーを占めて売られてる。もちろん木箱単位のトマトも。しかし小さな村、町では農家から直接買う人も多い。 ベランダや庭がある家ならいいけど、下町とかだと道に持ち出してやってる。 味はやはり缶のものとは全然違って、甘くて濃く、果肉がより感じられる。しかしやはり手がかかったものなので普通のレストランではとても出せない。市販の水煮の缶詰に頼ってしまう。 さてビンに詰める前の新鮮なトマトを使ったpasta al filettoの作り方。量とか書かないので適当に。 準備するのは 生トマト:できればサンマルツァーノ種(細長いやつ)。でなくても赤くて甘いもの。洗ってから冷蔵庫で冷やす。 上質のオリーブオイル:市販品の場合、ふたを開けてから数ヶ月以内のもの。 ニンニク1かけ 塩 大きめの鍋 作るパスタが全部入る大きさのフライパン+蓋 ・トマトの尻の先っちょに切り目を入れる。↓ ・果物ナイフの背を当てて縦に軽くこする。回しながらこする。↓(柔らかいトマトならやらなくていい。逆にむくときにむけなかったらその時こすってもいい) ・煮立った湯の中にトマトを入れて1分弱煮る。湯1リットルにつき一度に一個づつ。 ・少し冷ましてからナイフを使って皮をむく。手でむけるなら手でもいい。↓ ・縦に半分に切る。 ・中のグズグズの汁を種ごと取り出して捨てる。出口がなかったらナイフでもう半分に切ったり、切込みを入れたり。入り組んでる部分は指でかきだすように。 ・サイコロか、細切り、お好みに切る。お勧めは幅1~2cmぐらいだけど、お好みで、あるいは趣向を変えて4等分のごろりとしたトマトもあり。 トマトに使った湯をパスタ用に使うので、火にかけなおす。 塩を入れる。湯3リットルくらいだと大さじ1杯。茹で時間の長いパスタほど塩は少なく。大さじ1杯の、すり切りか大盛りかの間で調整。イタリアでは「海水と同じくらいの塩分で」と言われるが・・・。まねしないでください。イタリア特有の大げさな言い方かも。4分くらいの茹で時間ならそれでもいいけど、塩辛すぎたら保障できない。塩が足りなきゃあとからでも足せる。 しかしパスタにしっかり塩味をつけて、ソースは塩控えめにするってのがイタリア式。 ・皮付きのにんにくひとかけの上に包丁を寝かせて、上から手で押さえて、ぶち♪っと言わせる。ばらばらにならない程度につぶれてたらOK。 ・フライパンにオリーブ油をたっぷりと入れて、軽く熱する。 ・つぶしたにんにくを入れて狐色になるまで炒め揚げる。皮が自然に取れてくるので、皮だけ捨てる。 ・横にふたを用意する。処理したトマトを一気に入れてすばやくふたをする。 ・ばちばちがやや静まったらふたを取り、塩を少々入れ、5分ほど炒める。火はできるだけ強火。 好みのパスタを煮立った鍋に放り込む。 ・トマトの火を止めてパスタが茹るまで休める。 ・パスタの表示の茹で時間の1分ほど前に火をとめ、同時にトマトのフライパンのコンロを着火。 ・パスタを麺すくいですくって直接トマトのフライパンに移す。湯が少々入ってもOKだけど、湯の塩分が多い場合は要注意。 ・1分ほどよく混ぜながら炒める。鍋にひっつくようなら水を加える。 できあがり。皿に盛る。ニンニクを見つけたら拾って捨てる(笑) パセリは散らしてもいいが粉チーズはかけないほうが本場らしい。リコッタ・セッカならOK。唐辛子オイルはOK。タバスコはNG(笑) あと、生のバジルの葉や生のオレガノ、ネギかアサツキなどを乗せてもよい。 写真はウチで作ったきしめんを使った。しかも思いつきでいか・えび入り(^_^;) 全然違うサンプルですんません。シーフード入れるときは、トマトを炒めるときにたまねぎか白ねぎをほんの少し加える。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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