志を高く
フリーターから社会人として働き始めて、とにかく一生懸命に働いた。何においても仕事優先を通してきた。仕事で成功できないと、給料が増えないし、給料が増えないと、守らなければならないものも守れなくなってしまう。そんな情けない男はなりたくないと常々考えていた。結婚して子供ができたときに、たとえば必要なものを買えない経済状況でいるのは嫌だし、かみさんにだって窮屈な思いはさせたくないと考えていた。だから、それを理由に仕事にばかり時間を費やした。10年間、とにかく働いた。収入だって増えた。でも、幸せかと聞かれたら、そうじゃないのかも知れないと思い始めた。漠然と、人よりいい生活をしたいとか、漠然と会社で偉くなりたいって思ってた。でも、実際になってみても、常に不安が付きまとってくるし、心から安心して生活をしていない。考え方ひとつで幸せになれるはずなのに・・・なかなか穏やかな心でいることが難しい。何か新しいことを始めようと思い、ボランティアを考えた。地球温暖化、それによって被害を受けている国々の人たち。調べれば調べるほど、先進国の人間が犯している罪を知り、ショックを受けた。今までは、ボランティアしている人を軽視していたし、現実を知ろうともしなかった。でも、こうして知ることができたということは、自分にとって意味があることなんだと受け止めた。そういうことを考えるようになったと、社長に話したことがあった。自分になにかできることがあるはずだ。これからの人生は、人のためになることを積極的にやっていきたいと。すると、一人で始めたところで何の力にもならないし、やるだけ無駄だと言われた。企業が取り組んでいるボランティアも所詮は企業イメージを上げるための、ひとつの戦略に過ぎないんだと・・・でも、そうじゃない。俺は『志を高く』生きていくことを誓った。