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カテゴリ:フェレットの健康
□□様
2020/08 体重1800g 血糖値40mg/dl 5歳 ♂ 脂肪付き気味 肝機能GPT?300程度 エネルギー不足の発作を繰り返す。 朝方が多い ステロイド少量飼養 発症後1年 90分ほどお話をしたなかで要点を文字化しておきます。概ね冊子、紙面、著作に記載していることは詳しくは記載しません。 現在、お困りの発作はエネルギー不足の症状が全てです。血糖値の急激の低下での発作は言動中に上ってきていませんでした。私の経験では穏やかに生活できるレベルです。何も悲観することは一切ありません。できれば今後2年。できれば3年を超え8歳を越せる可能性は持っていると思います。ただ、今後動くので約束した結論ではありません。 インスリノーマを8段階に分けて評価したときに、ステージ5(悪いのは8)です。ただ、ステージを下げることも可能だと思いますし、この数値分類は私個人の表現です。 朝方のエネルギー不足の発作はよくあるのは長期間食事をしていないためのエネルギー不足からふらつきなどの症状が現れますが、2時間前の給餌をしているということでは少し事情が違ってきます。 少しお話を聴いていて私の定番の状態ではなく、また別のパターンですので、私の定番の状態をまずお話をします。 朝方の発作の原因は2つです 長期間食事を摂らす、起床時の発作は、食事を摂らないことでのエネルギー不足と、寝起きの際に体温を上昇させることで一時的に栄養素を消費してエネルギー不足を急激に作ることが要因と考えます。 ですからこの仕組みの場合は、寝起き後すぐにエネルギー管理を開始すれば寝起きの発作は消えます。その必要な物と頻度はその子によって違いますので、個別にその子に相談をして設定していきます。 2-3時間の強制給餌は必要はありません エネルギー管理の為の短時間の強制給餌を推奨する飼い主さんがいますが、看病をしている気持ちの充実感は持てますが、本フェレットにとっては食事をすることが苦痛になり、飼い主さんの手も怖さを感じることが在るので、やらないで済むのなら強制給餌はお勧めしていません。お電話にてお話をしましたが、現在直接のお客様でたくさんのインスリノーマの子と暮らしているお宅がありますが、私に強制給餌をしているという話をなさる人は一人もいません。そう、必要がないのです。 もちろん最終末期に食べなくなって強制給餌をすることもありますが、お話を聴いている以上は強制給餌(2-3時間置きの自発的ではない補給)を必要はないと思います。この2-3時間置きに補給するのは、獣医のステロイド治療に加えてやることが多いですが、結果は平均余命400日などに見られるのが現実です。3年も5年もインスリノーマと付き合うには夜も起きて無理に食べさせる看病は大変なので、やらなくていいのなら長期戦(今後長く生きる)を願うのなら辞めた方がいいのです。 この2-3時間の給餌がエネルギー代謝に足を引っ張っている理由を説明いたします。 お話しているように、食べ物は5分後、10分、30分2時間後にそれぞれエネルギーになる成分がざっと存在しています。この数字はざっと表現したものです。 エネルギーと表現をしているのは、ブドウ糖以外のエネルギー源を全て含めての言葉です。 ブドウ糖 ブドウ糖(グルコース)は血中に入るのが早いので真っ先にエネルギーとして消費され始めます。ブドウ糖が連続して繋がっている(α)デンプンは、順番に分解されるので、存在自体はブドウ糖と同じですが吸収の時間の関係で比較して緩やかに血液に入り利用されます。 果糖 砂糖の主成分ショ糖はブドウ糖と果糖でできていて、この果糖はインスリンホルモンに関係なく細胞に送り込まれます。単糖類で小さいので比較的早く血液に入り、じっくり利用されていき、余った分は中性脂肪に換えられます。 糖新生 2時間後にエネルギーになるとざっくり後程に利用されると表現したのは、タンパク質の糖新生です。これは血糖値が下がってきたときに蓄えられたグルカゴンを分解してブドウ糖を作り、グルカゴンは蓄えは大してないので、他の成分を材料にブドウ糖を作り血糖値を維持する反応が起こります。これを糖新生と言います。この糖新生の材料はタンパク質(アミノ酸)だけではないのですが、ざっくりタンパク質を題材に話を進めることにいたします。 ケトン体 その次には全体的に血糖値が下がり、細胞が飢餓を感じると脂肪酸からケトン体を作り、体のあらゆるところで使える万能エネルギー源を作ります。このケトン体を作り出すには細胞で飢餓を感じることが大切です。 ケトン体に関しての世の中の知見は2010年ごろから変化して行きました。それ以前の知識と大いに違うことが議論されています。私がケトン体に出会ったのは2002年以降のことです。その後、テンカンの子供に脂肪を多い食事をするケトン食療法を知り、脳の発作を起こさない取り組みを知り見識を深めました。この療法自体は1950年以降に使われだしたと言われ、2010年以降のタイミングで日本で保険適合医療になっているほど認められた手法です。多すぎるケトン体は問題ですが、使う分のケトン体は問題を起こしません。<<この部分がお話にあげた2019年に獣医に栄養学を教える立場の先生の著書で間違えて記載していたとお話をしている部分です>> ケトン体は脳のエネルギー源として唯一の代替え成分です。 結局、野生の肉食動物は何日も食事を摂れない日もあります。そんなときにブドウ糖だけではなく複数のサブエンジンの脂肪酸利用が命を支えているわけなのです。 脂肪の消費 私たちも体に脂肪を蓄え、春になり食事や汗をかくことで体脂肪を減らし夏に適した体に変わっていきます。つまり、脂肪を利用して減らすのですね。脂肪を使えなければドンドン蓄積してくことになりますが、そういうものではないのはご理解できると思います。 □□さんの◇◇◇◇君 さて、◇◇◇◇君は2-3時間の短い期間での給餌が、血糖値の下げ止まりをし、下がる前に高めてしまうので脂肪酸の利用までいかないのが脂肪の蓄積に見られる要因かもしれません。ステロイドの影響もあるでしょうが、その前に食事の与え方を先に着目をしています。 インスリノーマの初期、ステロイドを開始する前、インスリノーマと診断される前にフェレットは痩せ、毛艶の悪化が見られます。これは食べているエネルギー量では足らなくて、体からエネルギーを作りだして機能しているために起こる反応です。 インスリンホルモンが太る原因になる仕組み インスリンホルモンは細胞にブドウ糖を送り込む作用がありますが、また脂肪合成をするホルモンです。これは細胞に送り込んだブドウ糖があまり、脂肪にされるために起こる反応の説明です。果糖も余れば中性脂肪になり、また中性脂肪になりやすい成分です。 結局、細胞に発熱の元になるブドウ糖が大量に入れられても、ドンドン体温が上昇することはないので、インスリンホルモンがたくさん存在しているので細胞に送り込みますが、熱(体温上昇)にならずに余ってしまうのですね。 人種の差で考える アメリカ人がすごく太るのは膵臓が強くたくさんのインスリンホルモンを作れるためで、大量に補給したカロリーをドンドン脂肪として蓄積できるのですね。まあ、アメリカ人は多人種なので、膵臓が強い人種がいるという認識でいてください。一方日本人は膵臓が弱いのでアメリカ人のように太ることはできません。その状態になる前に糖尿病を発症し、今度は逆に痩せていきます。アメリカ人が太っていったのは日本人が関係しているという研究があります。これは面白く先ほどの果糖が関係しているのですね。コーラーなどの甘味材料のハイフルクトースコーンシロップ(果糖ブドウ糖液)がアメリカに広まっていくスピードと、肥満が増えていく州ごとの統計に相関があるというデーターを大学で教わりました。すごく興味深く授業を聴いていました。 このハイフルクトースコーンシロップは、日本人(記憶では富山の人)が発見した酵素を使った作り方で、トウモロコシから作りだしました。それがアメリカ人を太らせ種々の問題を起こしているのです。これは大いにフェレットのインスリノーマに参考になりました。 この成分としての果糖は使い方に注意が必要な成分ですので、そのポイントを押さえながら利用します。果糖自体の取り扱いは2002年から私は開始しました。当初ブドウ糖以外のエネルギーとして使いだしたのですが、そのあと3つの作用とインスリノーマの対応策につなっていくきっかけになりました。しかし、実際のインスリノーマの体調管理が簡単にできるようになったのは2006年のノニゲルミックスの採用を待たねばなりませんでした。果糖をやっている子にノニゲルミックスを与えるとなぜか有意差が産まれて安定します。なぜなのか理由は分かりませんが、穏やかに過ごせればいいのではないかと受け止めています。2020年になってもなぜ上手く行くのか理由は判明していません。おそらく出会いのモノなんだと思います。 体脂肪の量を管理する そこで、果糖は脂肪の蓄積をしたい時には、一度に多目に補給をして瞬間的に余らせて脂肪の合成を促進させます。1日の量が同じでも均等割りに少しずつ、消費される程度の補給であれば脂肪蓄積にならずに、穏やかに過ごせるエネルギー源として消費されていきます。この一度にたくさんと、少量を頻回の方法で体脂肪、活動エネルギーを管理します。 強制(自発的ではない)給餌 2-3時間おきの給餌は、私ではない情報発信源から産まれた手法です。これをすると糖新生までで終わり、脂肪酸消費までいかないので、複数エンジン(エネルギー生産の仕組み)を使いきれない状態になっています。 繰り返しますが、朝方のエネルギー不足の発作は、起きたら朝のエネルギー補給を少しやれば防げます。本フェレットと飼い主さんの負担を考えれば、食事を嫌なものと認識させることなく自発的な食事を中心に過ごせるようにすることを強くお勧めします。 自発的な食欲とは 著作のなかで記していますが、簡単に説明をしますと動脈と静脈の血糖値の差で食欲は生まれます。これはおなかの中に食糧が存在しているかどうかは少しの条件でしかありません。 腸から回収したブドウ糖は静脈から心臓を巡り、動脈から脳に回っていきます。脳では動脈と静脈のブドウ糖値に差が生まれます。動脈で細胞にブドウ糖を届けたので帰りの静脈にはブドウ糖が減っているというイメージです。継続的に充分腸から供給されればいいのですが、食事後時間が経過すると帰りの静脈でブドウ糖が減っていきます。この時に血糖値の下支えにグルカゴンの利用、糖新生などを起こしますが、それでも静脈からブドウ糖が減ってきて明らかな動脈との差が産まれた時に、「おなかが空いたなー」と言う感覚が産まれます。 自身の経験に理由を付ける 私たちも「おなかがすいたなー」と言う感覚がして、すぐに食べることができなければこの空腹感は消えませんか?おなかが空きすぎて、空腹を感じなくなる。これは動脈と静脈の差を感じていた脳が、動脈でも全身に送るブドウ糖が無くなってきて、動脈静脈共に血糖値が下がり、動脈と静脈の血糖値の差が無くなってくると、空腹感を感じなくなる作用です。この時には全身の血糖値が下がる状態になります。その次に血糖値が下がっても脂肪酸や、脂肪酸から作られるケトン体で体を動かすエネルギーは供給されていることになります。ここら辺のどの段階で次の反応のスイッチが入るのかは微妙なところで表現にも苦労しますが、段階的に反応が起こることはご理解ください。 ここでお伝えしたいのは自発的な食事が無い時に補給をしてしまうと、正常な反応を邪魔してします。それが良い場合もありますし、悪さをする結果になることもあります。生命力が充分あれば本人の食事のタイミングで、食事を楽しく感じられるようにすべきなのです。グラフで説明した後に食欲についてお話を続けます。一端グラフを複数ご紹介いたします。 イメージで理解する イメージなのですが、補給するものは量もあるので理想通りにはいきませんが理解の手助けになるようになると幸いです。縦軸はエネルギー、横軸は時間です。 図① ブドウ糖消費 かなり上で説明しているように、ブドウ糖はすぐに血液に入ってきて消費されます。 血糖値の高まりを示しますが、量が充分ではない場合、インスリンを呼び、インスリンの影響で急激に血液中から消えます。直接のブドウ糖補給はあまりの量を使いませんのでこんな感じです。 ②デンプン ブドウ糖と比べてゆっくりエネルギーになっていきます。 ③糖新生 タンパク質(アミノ酸)などから、血糖値が下がってきてから血糖の下支えとして放出されます。 ①-③までの血糖値の推移 ブドウ糖、デンプン、糖新生は血糖値で一つで数値化されます。 血糖値の推移 ④ケトン体の発生 ほかに脂肪酸のエネルギーの利用もありますが、それはおいておいて、脂肪酸からできるケトン体の存在に話を移します。それはケトン体は脳で使えるエネルギー源だからです。 簡単に血糖値が下がり飢餓状態になっていくと脂肪酸からケトン体の生産が始まります。 ⑤エネルギー値=血糖値+ケトン体+α グラフの旅の最期です。ざっとしたものですので明確にこれが正解ということは一切ないです。下がってきた血糖値を支えるためにケトン体が出てくるとざっくりとしたご理解で結構です。 寝起きのエネルギー事情 先にご説明したように寝起きには体温上昇でエネルギー消費が起こります。そこでエネルギー不足の症状が起きないように、目覚めたら寝起きのミルクの様にその子用の必要分を補うと寝起きの発作は起きないようになるでしょう。 寝ている時には体温が低いです。起きる時に眼で光を感じ、副腎でステロイドホルモンを放出し、インスリンホルモンを出し、体温を上昇させ心地の良い起床に繋がります。2006年に兵庫県の大学で判明した起床メカニズムです。 WUS (ウェイク アップ サプリメント:起床サプリ) 結局、集団で寝起き用のサプリの設計はできますが、細かく言うと一頭一頭事情が違うのでできればその子用の寝起きの相手様に規格されれば一番よろしいです。 少しグラフで説明をしてきました。 結論的にはエネルギーがどれだけ補給できているのかを、イメージで把握することにつきます。 農業を始めるにあたり学校に行き、学び、そのなかでのことがインスリノーマの管理に応用できるようになっています。これは「一発肥料」と言うものです。これは米でもジャガイモでも肥料をする時のもので、生育段階で肥料を蒔くのですが、一発肥料は米なら田植え時に一回蒔くことで、それ以降の施肥が必要なくなる方法です。 この一発肥料には生育段階段階で、〇〇日後から○○日後までにこの肥料が供給されるようにコーティングされた肥料を組み合わせて、収穫までその時に必要な成分を稲に供給するように設計された肥料です。 この説明でご理解できるでしょうか? 話を進めますと、フェレットでもエネルギーに使われるまでに成分には特徴がありますのでそれを複数組み合わせて自発的な食事で発作の起こさないように設計することを意図して調合しています。これはその子その子によっても、季節や、天気によって、病気の進行、他の病気が増えることでも変わってきますのでその都度いまいちだなーと思うときに調整を加える必要のある物ですが、概ねその時にその子の自発的食事とサプリ(栄養管理)で短時間の給餌が必要のない暮らしを目指します。 そのための説明としてグラフでお話をしました。 病気や発作、症状が出るのは悲しいと思うかもしれませんが、一概に「悪い」と言う評価ばかりではありません。それは継続してその問題が解決しないのは良くないのですが、その発作、症状を認識してそのどこに体に問題があるのかを探る手掛かりになるからです。 2週間もその症状を消せないのは良くないことだと思いますが、ちょっとした不調はむしろその子の体をよく知るキッカケになるのでむしろ良いことかと思います。 そろそろ今回は終わりにして行きたいと思います。副腎の影響も話題に上ってきましたが、ほかには季節、気候、病状より実際に必要になるエネルギーの補給は大きく違ってきますので、初期設定量で充分ではないときがあります。これはその命との相談でご説明したようにどのタイミングで異常が出るかの把握で、どこに問題を持っているのかを推測して行くことになります。 お話を伺った範囲での◇◇◇◇君は、充分対応できる自信はあります。しかし、一発の調合で掴み切れるわけではありません。それは1年獣医の診断を受けても上手く行かないことが、わずかな時間のお話で分かることではないのですね。ご説明している仕組みを参照に、その子その子の体の仕組みに理由づけをして行くことが大切になっていきます。 理由づけをして行くことは、その考慮した理由の修正をして行けばいつかはフェレットの仕組みが見えてくると考えてやってます。理由(仕組み)がわからないことも多いですが、やみくものよさそうと思うものを繰り返していっても結局は時間の浪費で終わっていきます。そのために理解しずらいこともあるかとは思いますが地に足を付ける感覚で命に接してみてください。 2020/09/02 文責 永池清詩 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.11.04 22:12:45
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