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「エレナ、オーダーが入る。日替わり1とエールが2だ」
――― 一分のムダすらないキビキビしたその身のこなし。 「ああ、追加の注文か。すぐにそちらに行く。少し待っていてくれ」 ――― 耳に心地よい落ち着いたバリトンの声。 「……と、この3品だな。承った」 ――― そしてなによりビシッと決まったあの執事さんコスというかギャルソンスタイル…… (ああああああああああああああっ、やっぱ格好いいようウォードたん~~~~!!!!) 「……ねえセイラ、こっそり覗き見してないで入ろうよー、むちゃくちゃ怪しいヒトだよ?僕ら」 とかなんとか宿屋の入り口でじたじたしていたら。 胸ポケットに入っていた琥珀が顔だけだしてぽそっと一言そういった。 「んー。もうちょっとだけ…」 ほとんどうわの空なあたしの返事に、琥珀は呆れたようなため息を一つつくともう何も行ってこなくなった。 ―――あれから。 あたしはもう速攻でお店閉めて、ミュルスにやってきた。 いく用意をしてるときに琥珀が座標軸知らないでしょ?! みたいなことを言ってたけど。 ちっちっち。 このセイラさんを舐めてはいけないですよ? ウォードたん一行が前の町を離れるって聞いた翌日にはもう、 次の町へつながる穴をみつけてたもんねっ。 ただ、ウォードたんたちがどこに落ち着くかわからなかっただけ。 というわけで琥珀に連れられウォードたんがバイトしてる、 「古き機械の軋み亭」へ案内してもらったわけなのである。 店内は木のテーブルがいくつかあって、カウンターの向こうではバイトらしいエレナちゃんが忙しく立ち働いている。 まあよくある宿屋は二階で一階は酒場って感じかな。 外観としてはこじんまりした宿屋さんだなって印象だったんだけど。 お昼時ってことをさしひいてもこれはかなりの人気っぷり。 あっちこっちからお客さんの声がかかって普通なら対応するだけでもわややになりそうなのに、 それを水が流れるようにするする注文とってくウォードたんの姿は。 見惚れるほどに格好良すぎ。 まあ、ウォードたん戦闘用ロボだし、お昼の食堂は一種の戦場だし。 けっこうあってるかもね…… 「嬢ちゃん、どうしたぁ?そんなところにぼけーっとつったって」 ……はっ。 いい感じに出来上がったおっちゃんの声で、あたしははた、と我に帰った。 「あ、あは、あははははははっ♪なんでもないんですすいませ~んっ♪」 どうやらこっそり覗いてたはずが、いつのまにか宿の入り口で仁王立ちでうっとりしていたらしい。 これ以上おっちゃんにじろじろ見られてもイやなので、とりあえずカウンターの方に移動。 やっぱりばたばたしているエレナに声をかける。 「エ~レ~ナっ。やほー」 彼女の手には料理がいっぱい乗ったお皿が片手に3皿づつ。 合計6皿ももって出てきたのに危なげなようすはみじんもない。 器用な…… 「ああ、来たのねセイラ♪急にこれからくるって琥珀からきいたときはびっくりしたけど。どうしたの?」 「いやちょっと……琥珀がとったっていう写真みたら……さ」 ごにょごにょっと語尾をごまかしながら、ウォードたんの方に目線を移す。 エレナちゃんは少しの間、?ってな顔をしてたけど、すぐにああ、と苦笑して 「ああそうか……ウォードがああいう格好してるって聞いて、黙ってる貴女じゃなかったわね」 と納得したようにうなづいた。 その間にもひたすらウォードたんの姿を追ってるあたしだけど(笑) 「そうね……そしたらせっかくだし、何か食べる?」 「んー…何があるの?」 「そんなにメニューは多くないけど、鳥の蒸し焼き定食が美味しいわよここ。あとね」 ここの奥さんがハーブを漬け込んだハーブ酒を造ってるらしく。 「健康と美容にいいらしいわ、飲んでみる?ちょっと高いけれど。もちろん―――ウォードのサービスで」 そういってエレナちゃんはいたずらっぽい笑顔を浮かべた。 ……ウォードたんがお料理もってきてくれる上に、お酌までですとぉぉぉぉぉぉ?!?! 次の瞬間、思いっきりぶんぶんぶんと首を縦に振っているあたしがいた。 エレナちゃんてば密かに商売上手……? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 12, 2005 12:52:13 AM
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