朝用あって出向いた大ママの家で
「今日は小学生のAとWは代休でお休みなの」
大ママ「え、今昆虫の絵の展覧会しているよ。Aちゃん昆虫大好きでしょう?連れて行ってあげようかな?」
「あぁそれは喜ぶと思う。でも大抵月曜日は美術館お休みなん違う?このCちゃん(妹)の好きな藤城清治展も今日はお休みやし・・・」
電話で早速確かめた大ママ
「大丈夫、高島屋やからやってるよ」
急いで帰った私は色鉛筆で絵に色をさしていたAに問いかけ、すぐに用意するように伝えた。洗濯物を干しながら
ちょっと待って、昆虫の絵ってそれ前にこの日記で紹介した熊田千佳慕さんの作品展ではないかしら・・・ ついこの間亡くなられたって新聞で読んだけれど・・・
またまた電話で大ママに訊くと、そうその人ズバリだという。
じゃぁ 私も行かなくっちゃ!
Wどうする? え、昆虫苦手なの? じゃぁお兄ちゃんまだ寝ているけれど、家でお留守番しとく?
そうね…一緒に来た方がいいよ、よしみんなで行こう!!
千佳慕さんの作品は何においてもその緻密さに誰もが驚嘆の声をあげる。
ピンクのレンゲソウの花、実際には1センチほどなのに画面の半分を埋めるほどに描かれていて、そこにいる蜂は実物を虫眼鏡で見たときのように描かれている。
使われる筆はたった一本の細筆のみ。丹念に「見て、見つめて、見きわめる」納得のいくまでそこを怠らない。
何時間も腹ばいになって虫や植物を観察するので、行き倒れの人と間違えられたりもするらしい。たった一枚の作品に何年も費やす。
原画を見て思った。評判ではまるで生きているようと言われているので、写真のようなリアル感があるのかと思っていた。
でもそれは違った。写真のような「なまもの」的なリアル感ではなくて、植物や昆虫、動物の日常の営みの捉え方がまさに生きているようなのです。写真よりもずっと生きている瞬間が描かれているように思えた。
本当にすごい目です。
小さなとき身体が弱くて10才まで生きられないだろうと言われていた千佳慕さん。94歳になられた時、「愛するからこそ美しい」小学館を出され、その冒頭にこんな言葉を添えられている。
愛する皆さん
春の花の季節に
私のパレットから生まれた
四季の花々のニューフェイスが
皆さんにお目にかかります
私は94歳の本格的なジジイになりました。
人生の秋深いところに住んでいますが
心の中には、いつも春風が吹いています。
このギャップを
うまく中和しながら生きていくことが
この年代の過ごし方であると知りました。
今、私の目の前には、
神さまから授かった仕事が山積みされており、
これを消化する毎日が続いています。
あなたも愛の心のともしびを消さないように
毎日を積み重ね、美しい年を重ねて下さいね。
「愛するからこそ美しい」
この言葉をお忘れなく。
この本のあるところ、
私はいつもあなたのそばにおります。
またいつか、あなたにお会いする日がくるでしょう。
何よりの楽しみに。お元気でね。
この細やかな
愛の花束を
妻に捧ぐ
六十年の労苦に
感謝をこめて
千佳慕