さっちゃんと９人家族

　　植物園のバス停に降り立ったとき、Ａは言いました。

「私、植物園に入る前にあるあの道が大好きなん」
「あぁ　並木道ね～～　本当に気持ちいいもんね」

そういいながらその道に差し掛かり、左手の府立大学グラウンド越しにくっきり見える美しい形の比叡山に
「素晴らしいね～」と感嘆していたら、

通り過ぎた方から「こんにちは」とご挨拶を受けました。

あら？

と振り返ってみれば、４月の初めに転勤された小学校の保健室の養護の先生です。

「わぁ～～お久しぶりです。」と三人で手をいっぱい振りました。

一通り園を堪能し、遊び疲れてくると、Ａはアイスがほしい～～と言いだしました。
ええ～～、そう言いたくなるようなお天気だものね。
私ももちろん最初からそのつもりはしていたのですよ。

でもそのアイス！というものに心を引っかけてしまうと、もうＡはどんなに素敵なバラたちに出会っても表情は力を失ったまま・・・で私はがっかり。

その点においては６年生のＷはちゃんと今大切にするべきことを選ぶことができ、あとからの楽しみにアイスを取っておく力がある。

６年生と３年生の年齢の違いなのか？
それとも個人の問題か？

分らないけれど、しかし７人きょうだいの末っ子という家族での位置がＡに甘えを作っている可能性は大いにある。

やれやれ、と思いつつ、売店のある建物に急ぐことにしました。

ひとしきり迷ったけれどお気に入りのアイスクリームを見つけ、二人は売店横のテーブル席でいただくことにしました。

すると売店の係の女性がちらちらと私の方をご覧になっているのが目に入ってきました。

何かなぁ～～と

思っていたら、応対するお客さんがいらっしゃらなくなった隙にこちらの方に出て来られて、Ｖｎを弾くポーズをしながら
「Ｖｎの方ですよね？
毎年来てくださっていた！！」

「ええ、はいそうです。その節はお世話になりまして・・・」

「いえこちらこそ、いつもありがとうございました。
実は本当のことを言うとこちらで勤務していたので演奏は聴いていないのですが・・・。

あの、わたしＫ中学にいたんです。たぶん１年私が下だと思うのですが、そのころからＶｎを弾いていらっしゃるの知っていたんですよ！！ずっと弾いていらしたんですか？」

「あら？そうなんですか！まぁ子育てとかで１２，３年はまともに弾いていなかったんですが・・・。」

と思いがけない展開となりました。
なんだかんだと言いながらも、Ｖｎを持っての活動もそれなりに板についてきたのかもしれません。

先日も教会のお友だちがお医者さんのところに行かれたら、
「Ｔｏさんのことは知らないけれど、さっちゃんのことは知っていますよ。僕も音楽が好きでね」
とおっしゃったそうな。

ということで、小学生組のための良い時間のつもりだった植物園だったけれど、意外にも私の音楽的分野にもポンと背中を叩いてくださる勇気をいただいたのでした。