さっちゃんと９人家族

　　下のAが生まれ２ヶ月にならない時に、私は舞台の上にコンマスとして立っていた。本当は４５歳で出産して間もないので、そんな無茶なことをするつもりは少しもなかったのだけれど、最終的にそうせざるを得なかった。

けれどもそれはのちに私にとっても当時バレエをしていたMやKにとっても特別の出来ごとになっていった。
うちのオケのくるみ割り人形抜粋版演奏に二人は他のバレエクラスの皆さんと一緒に生のオーケストラ伴奏でバレエを踊ったのだから・・・。たぶん母と娘たちの共演は最初で最後。

以来オケはこの１０年回にたぶん７回ぐらいの演奏会を開いたと思うけれども、バレエの方は全くステージに立つことはなかった。
とても小さなクラスで、幼稚園の子どもから高校のお姉さんまで２０人しかいない。

あのとき６歳でステージに上がった始めたばっかりの小さな子どもが、今は高校生になっている。こんなに立派になったというのに、この姿をステージで見ることができないなんて・・・。

そう残念に思っていたころにJ先生のモーツアルトのピアコンの振り付けが終わった。
とっても小さな子どもたち以外のみんなが、この作品に参加している。
その前の年にやったエルガーの「威風堂々」も同じように、替わるがわるいろんな子どもたちがいろんな形で出ている。

幼稚園のホールいっぱいを使うこの作品たち、どうしても全体をみることができない。

とうとう私はJ先生に言った。
「先生、この作品、簡単なやり方で良いので一度ステージに乗せてみませんか？」

「う～～ん、みんながどう思うかな・・・？
舞台はお金がかかるからね～～～」

そうなんです。２０人の生徒それを支える家族数はわずか１２家族。
「舞台はお金がかかるからね」を耳にした時私は一つのことを思い起こしていました。

つづく