真田信之~弟幸村をしのぐ器量を備えた男~
著:川村真二PHP文庫戦国時代の「真田」と言えば、大阪夏の陣で華々しく散った真田幸村こと信繁があまりにも有名(幸村=信繁には異論もあるらしい)だが、本作では、信繁の兄であり、すなわち真田昌幸の嫡子である真田信之(信幸から改名)が主人公。彼は、関が原の戦いを前に父弟と袂を分かって徳川方に付いたことで真田家の命脈を繋いだ。関が原で親子兄弟が東西両陣営に分かれて戦ったのは、老獪な真田家の御家存続のための方便という説も強いようだが、本作では、家康の側近として長く仕えていた信之が、その器量を高く評価し、父弟との激論を経て涙ながらに家康を選んだという筋立てになっている。真相がいずれであるにしても、真田幸隆以来の真田三代(幸隆→昌幸→幸村)が、徳川250年の御世を経て、稀代の武将として現代になおその名を留めているのは、結果的に徳川体制の一翼を担い、幕末まで真田の家を生きながらえさせることとなった信之の存在があったればこそであるのは紛れもない事実だろうと思う。歴史は奥深い。。。