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カテゴリ:Modern / Avant Garde
Paul Giger / Chartres (ECM NEW SERIES 1988)
降霊術・・・ Paul Gigerがシャルトル大聖堂の伽藍のなかで深夜1時からバイオリンを弾きはじめ、夜が明ける前まで発した音がこれだ。 夜も更けて、さまよう亡霊たちが聞き耳を立てる教会の静寂が、音楽家とエンジニアたちをつつみこむ。 彼は1本のバイオリンを持って佇み、用意してきた曲あるいは単なるモチーフのみをもとにして弦に弓をあてる。 大聖堂の4箇所で、それぞれの場所の残響という音の影に存在を反映させながら、バイオリンがその恩恵を時空に削りだす。 その音が何かを表しているわけではない。 何かを伝えようとしているわけでもない。 彼は、霊と交信し、交信は肉体を通して音へと姿を変える。 これを書いている私は、赤坂のビルにいて昼休みのラウンジのソファに座っているが、じつはいつも、誰にも気づかれないように、霊と交信している。 音を出すかわりに、言葉を闇の奥から引きずり出して、そいつらをなぶるのだ。 床の石材は犠牲者たちを守る墓であり、冷房の空気は霊魂の温度である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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