醸造家日記(原点を探る道3)
青臭い学生生活とも決別すべきときが来ていた。当時バイオはどんな会社でも新規事業として人材を確保し始めていた。周りは何社も内定を取り付け余裕であった。私は別の意味で余裕を繕っていた。両親との約束があったからだ。いわば諦め的な感情があったことは否めない。当時バイオ技術を生かせる業種は県内には皆無に等しかったからだ。そんな折、某JAグループが醸造技術者を探しているとの情報が入ってきた。なるほど、醗酵つながりで探せば捨てたものではない。早速帰省して面接のアポを取った。本部人事課にて約3時間、ワイン事業について説明を受けた。後日工場長から約3時間、将来構想の夢について、さらに技術主管から約3時間、ワイン造りの理念について、思いを聞き入った。決して好条件とは言えないが、何かあると感じ、入会試験を受けることとした。思いの強さが期待を産み出し、その期待に人は集まる。期待されることで人は確信をもつ。