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テーマ:お勧めの本(7364)
カテゴリ:Soliloquy
デビュー作とは思えないくらい完成度の高い作品。 タイトルだけでは、いっけんわかりにくいけれど、ゼロとはあの零戦のこと。 そう、これは戦争物。 現代に生きる、司法試験に落ち続けて目標を失ったニート中の弟と結婚に迷いながらもジャーナリストをめざす姉が、存在さえ知らなかった特攻でなくなった祖父の生き様、死に様を調べ始めると、意外な祖父の姿が浮かんでくるというストーリー。 数多くの戦争物を読んできたけれど、歴史にも忠実、これだけ下調べしていて、かつ人間の強さと弱さの心理コントラストを見事に描いた作品はないと思う。 いつか本屋さんでタイトルを目にして、図書館予約を入れてから1年近く(人気作品だった為)、今、この時期に読むことができたのも何かの縁だったのかも。 8月になると、いっきに平和ムードが漂うこの街。 観光客も多く、すぐそこで、祈念式典が行われ、たくさんの祈りが捧げられる。 正直、幼少時代の平和教育に関して、あまり積極的な生徒ではなかった。 みかけは、優等生的に戦争についての作文をきれいに仕上げることができても、戦争なんて私たちの今からの時代には関係ない、時間をかけてそこまで知る必要があるのかわからなかった。 大学時代からは、視線をかえて、戦争物でも、戦犯、極東裁判についてのルポルタージュなどを好むようになったけれど(心理的な面を考えてみたくて)、いつも、そこからはなかった。 所詮、戦争物。遠い時代の負の遺産。 でも、この地に住むようになって、そして、この「永遠のゼロ」を読んで、今まで私が不真面目ながらも勉強してきた、仕入れてきた戦争の知識は役にたったのだと思えた。 語り継ぐ人がいなくなりつつある時代、戦争を全く知らない世代に変わりゆく時代に、戦争の歴史を忠実に伝え、そこからの判断を担ってもらうこと。 人間にとって、何が必要で何が不必要なのか。 発展とともに捨てるもの(その代償)はどのくらい大きいのか。 今、問われている問題にも直結することであろう、人間の歴史と、平和の形、子供たちへもきちんと説明できる親でありたいと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015年04月16日 00時25分37秒
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