魚人島編クライマックス。
尾田がネトウヨになった!と発表当時一部で騒がれた回が収録された65巻。
“歴史を忘れるな”
“死者達の無念を想像しろ”
“恨みを引き継げ”
を合言葉に、テロリストを英雄と持て囃し、
自分たちの手で王国の王妃を殺しておきながら人間に罪をきせて、恨みを生きながらえさせた新魚人海賊団。
仲間を自分たちの手で殺しておいて、“恨むなら人間を恨め”“我々にふりかかる災いは全て人間が原因なのだ”と最高に意味不明なセリフを吐きながら、
怨念を無理矢理にでも受け継いでいこうとするその狂気。
己の聖戦が正しくある為、人間が良い者でない事を願い、
魚人族の平穏すら望んでいない“環境が生んだバケモノ”たち。
「体験」と「意志」が欠如した“実体のない空っぽの敵”こそが、魚人島の、魚人族の敵でもあった。
怨念の亡霊。
「過去などいらない!ゼロにしてくれ!」と泣くフカボシ王子の言葉と、
ルフィのノア破壊は、魚人島の歴史と悪しき伝統その両方を破壊するという点で、完全にシンクロする。
自分の目で見ろ。まっすぐな目で。
戦闘マンガにおいて、“何故戦うのか”“どうして強くなろうと思うのか”がきちんと描けていないモノは、総じてつまらない。
作者の根っこのところにある“戦いとは・生とは・人生とはなんぞや”という部分が試されるところで、
なんだかだ言っても尾田はそこのところをちゃんと描いていて、ひとりひとりのキャラクターが抱える正義や信念みたいなものを大事にしてるから、面白いんだと思う。
同じくらい人気はあっても『NARUTO』の岸本某が決定的に違うのはそこで、
彼は学校で習った平和至上主義的なものに対する親和性を隠そうともしないのが、致命的なんだよね。
ルフィがついに炎出しちゃっておいゴムゴム何してるって感じなのが笑かします。
新生麦わらの一味にとって新魚人海賊団がてんで弱くて、ジャンプお得意の強敵スパイラルにはまらないのも好ましい。
相手が強いからじゃない、叩きつぶす意味があるから、戦うんです。
守るために。