ダンデライオン
溢れる大自然。どこまでも広がる草原。そう、ここはサバンナ。自然の厳しさの中にも動物同士仲良くやっている。そんな場所だ。その中で1頭孤立したライオンがいた。このライオンは小さい頃親とはぐれてからずっと孤独だった。みな、自分がライオンというだけで逃げていった。ライオンはそのうち仲間を自分から遠ざけた。しかし心の中ではとても寂しかった、友達がほしかった、ライオンは寂しがりで、強がりだ。ライオンはいつも寂しくなるとつり橋を渡る。つり橋はいつもと同じくライオンを揺らす。ただ1つ違うこと、それは橋の向こうにお前がいたこと。ライオンは吠えた。吠えてしまった。ライオンは後悔した。また1つ友になる機会を潰してしまった としかしお前は逃げなかった。ライオンは驚きと喜びとが混ざるような不思議な感覚になった。「に、逃げないのか?怖く・・・ないのか?俺が・・・」その時そよ風がつり橋を吹きぬけた。そして初めての友は一度だけ、優しく頷いた。そう、ライオンの初めての友達は1輪だけまっすぐ立っているタンポポだった。タンポポは他の草が全く生えていない所に凛と佇んでいた。まるでライオンのように。ライオンはいつのまにか今まで流したことのない温かい涙をその鋭い目から流した。今まで冷たい涙しか流したことのなかったライオンにとって温かい涙とは不思議な感覚だった。「この暖かさは多分お前がくれたんだな」それから毎日タンポポに会うためにつり橋を揺らした。今日は土産を持っていくつもりだ。お前に似て無口な、お前に似た色の小石つり橋に近づいてきた頃、突然入道雲がサバンナを覆った。「雷が、来る・・・」動物的直感なのか、かなり近くに落ちる事が予測できた。そしてつり橋の真ん中に差し掛かった頃突然辺りがとてつもなく強い光に包まれた。メキメキと吊り橋が悲鳴をあげ、足元が崩れていく微かに見えたタンポポを最後にライオンの意識は途絶えた。激しい痛みと共に、ライオンは目を覚ました。しかし意識は朦朧としていて、今にも目の前が真っ暗になりそうだった。「ここで・・・死んだら、あいつは、一人になっちゃう・・・あいつを・・・泣かせてたまるか・・・」ライオンは最後の力を振り絞り、大きく吠えた。谷の上にいる親友に届くように。(この声が聞こえるか!心配するな!俺は大丈夫だ!)ライオンはとにかくタンポポに濡れた頬の冷たさを知ってほしくなかった。ライオンの血は激しく降りつく雨にとけていった。「生まれ変わったら・・・お前、みたいな、姿になりたいな。そうしたら・・・もっと愛されるかな?寂しくなんかないかな?」ライオンはもう元気な声で吠えることは出来なくなった。しかし決してライオンは寂しくなかった。初めて自分を認めてくれた事。冷たい涙を奪った親友に出会えた事。ライオンはもう悔いなどなかった。ライオンは最後に涙を流した。誰よりも温かい涙を。なぜ涙が出てきたのかは分からなかったが。この心の温かさがそのまま答えでいいとわかった。そして春が過ぎ、灼熱のような夏が過ぎ、木の下が落ち葉でいっぱいになる秋が過ぎ、凍えるような冬を過ぎ・・・季節が巡り、また春がやってきた。谷底には、冷たくなったライオンの温かい涙と共に、ライオンの親友がたくさんいた。みな、ライオンによく似た姿だった。【あとがき】さて、ちょっぴり切ないダンデライオンをやったわけですがやはりこの曲もストーリー性のある詞なので比較的書きやすかったです。タンポポという言葉をいつ使うのかを迷ったのですがそれがまた面白かった。これからの予定はとりあえず今あるリクエストは全て消化したのでこれからリクエストが無かったら自分で選曲することにします。リクエスト待ってるんでいつでもどうぞですそれではまた。from Iyafon