もう一度。
細かなところまで手づくりで丁寧に造り上げた花のレリーフ・カップ実は、一年がかりで販売を企画していた商品が、諸事情で没になった。そんなことは、日常茶飯事。クヨクヨしないのは、得意技だ。この商品もそのひとつ。カナダのデザイナーが、様々な花やフルーツをモチーフにしたもので、主にはヨーロッパ方面に流通させている。値段もそれなりに高価だが、手に取ると何故か惹かれる品の良さがある。モチーフを活かす独特のシェイプと、細かく活き活きとしたレリーフと色使いが特徴だ。特筆すべきは、生地も色つけも、すべてひとつひとつ手づくりで仕上げていくという技術。残念だが・・・。日本では、もはやこの技術を受け継いでいる職人は消えていく一方だ。細かな細工も、色つけも、繊細な日本人が得意とする技術だったはず。それが、産地の職人も年々高齢化とともに、後継者不足は否めず、衰退していくばかり。せっかくの技術とこころを伝承していくことができずに消えていく・・・。この商品は、中国製だ。ひと昔前は、中国製はチョッと・・・という風潮もあったし、確かに信用性に欠けることも多かった。ただし。大陸は、進歩の努力も怠らない。もはや、このレリーフ・カップの技術の完成度を望んでも、日本では造れない、という。この商品を中国の展示会でいち早く目をつけ、日本での販売をすることにしたのは、ナニを隠そう、日本でも有数の歴史ある産地・有田の会社の社長だ。日本人として悔しい、とも思うが、モノづくりに関して、素直に敬意をもっている。モノづくりと、売り場づくりの両方に携わる自分としては、色々と感じずにいられない。せっかくの技術を、このまま消えさせていいのだろうか。モノづくりの多くが、安くないと売れない、というルールをつくり、次々とこぞって中国の工場に技術と機械を持ち込み、努力したことも時代の流れとしては、大切なことだったのかもしれないな、と思う。でも。気がつけば、日本の国の中に、次の世代のモノづくりの職人を育てていなかった・・・ということに、今 気がついた、と嘆く。そんなジレンマを色々なモノづくりの現場で聞く。今、様々な偽装問題に日本が緊張している。今こそ、日本の良さを見直したい。真面目で繊細な感性を持つ日本の良さを、「技術」も勿論そうだが、「日本のまごころ」を伝承していきたいものだ。大丈夫。無くしたことを憂い、嘆くより、新しくまた築いていけばいい。やりなおせるよ、ニッポン!そんなことを想いつつ、企画という仕事の現場で、今日もモノづくりに活かしている。