癒しの本を読む:『サンタクロースっているんでしょうか?』(1)
1897年にアメリカで実際にあった出来事が1冊の本になりました。8歳の女の子バージニア・オハンロンは、パパに真顔で尋ねます。「サンタって、ほんとにいるの?」パパは、こう答えます。「じゃあ、新聞社の人なら本当のことを知っているに違いないから、聞いてごらん」そして、バージニアは、サン新聞社に1通の投書で問いかけます。「友だちはみんな、サンタクロースなんていないって言います。本当にいるんですか?」少女の問いかけに、新聞社サンは社説として答えます。その内容が出版され、今でも、世界中の人に、心の深い部分にひびくメッセージを送り続けます。「Yes,Virginia,There is a Santa Clous」の書き出して始まるサン新聞の社説は、私たちがつい忘れてしまいがちな大事なものを教えてくれます。誰も見たことがないからサンタなんていない、という友だちの意見に、明快に反論します。「見たことがないということは、いないということではないのです」思いやり、夢、希望…目には見えなくても確かにあるものですね。人を癒し、豊かにしてくれるものです。それはたしかに実在するし、むしろ、いちばん大事な部分なのでしょう。物に囲まれているのにどうしようもなく空虚な時代、生きる意味が実感しにくい今の時代ほど、求められているものです。この本が訴えかけるのは、想像する心の大切さ。「 目に見えない世界をおおいかくしているまくは、どんな力のつよい人にも(中略)ひきさくことはできません。ただ、信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンを、いっときひきのけて、まくのむこうの、たとえようもなくうつくしく、かがやかしいものを、みせてくれるのです。(中村 妙子 、訳) 」