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カテゴリ:身近な出来事
きょうは告別式。 たくさんの人が別れに訪れた。 代表で弔辞を述べたのは絵描きさん。故人と一緒に優れた番組を世に送り出した人でもあり、故人と同い年の友人でもある。 10年ほど前、絵描きさんは故人の娘さんを送る弔辞を読んだ。 この、同じ斎場で。 友人の娘、そしてその友人をも送る言葉を述べることになった絵描きさんの心の内は、言葉のはしばしに感じ取れた。 故人を乗せた霊柩車が長いクラクションをひとつ鳴らして斎場をあとにし、遺族と友人たちが乗り込んだバスが走り去ると、張り詰めた空気がゆるやかな悲しみに変わった。 ぐずぐずしているうちに最後に斎場をあとにすることになったぼくは、誰もいないホールを見回してから駐車場に降り、喪服の上着を脱いで車に乗り込んだ。 はぁ。 ひとつ深呼吸してから車を通りに出す。 と、反対側の歩道を絵描きさんがこちらに向かい、ひとり歩いていた。 あのバスには乗らなかったんだろうか? 話し上手な絵描きさん。メリハリの効いた声で、抱腹絶倒、面白い話してくれた。難解な、精神的な話も。 この絵描きさんを取り上げた番組の制作に携わったことがあったっけ。 もう、何年前になるのかな? その番組のプロデューサーは故人だった。 アトリエに行くと、ぼくの部屋の壁よりももっと大きなキャンバスを床に横たえ、その上に渡した板に座り込んで創作にのめり込んでいた。 友人の娘さんの絵を眺めて、いい絵だいい絵だ、ほんとにいい絵だ、と、心底感心しながら、嬉しそうに話していたっけ。 その友人が、故人となった。 少し前屈みの姿勢には、故人と同じだけの年齢を重ねてきた、その長い時間が感じ取れる。 友を亡くすというのは、どんな気持ちなんだろうか? 唇を真一文字に結び、前を見据えて、ひたひたと歩く絵描きさん。 ぼくは声をかけることができなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.03.24 23:16:46
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