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1月1日。母は、2017年を病院で迎えた。
午後1時過ぎ。母宛の年賀状を持って病室を訪ねる。 少し傾けてもらった電動ベッドに横たわって窓の方を見ていた母は、気配を感じたのか、こちらに顔を向けた。ぼくの顔を見ても何も言わなかったけど、顔色も良くなってきてるように感じる。 年賀状を手渡す。 入院したとき、母は何も手に持つことが出来なかった。それが高い熱のせいなのか、それとも別の病の影響なのか、今のところ分からないけれど、今日は年賀状を手に持つことが出来た。 母は年賀状を1枚1枚、眺める。これが年賀状という、季節のグリーティングのためのやりとりだということは分かっていないけれど、きれいな絵を描いてくれているハガキは多少なりとも時間をかけて見ている。家族の写真を載せている賀状もお気に入り。 1枚の年賀状から、出してくれた方の名前を読み上げて、 「覚えてる?」 「覚えてるよぉ」 でも、反射的に答えているような感じで、どこの誰かを思い出しているわけではないようだ。 元旦というのに、今日は暖かい。母の病室は南西を向いているので日中から日が傾く時間は太陽が差し込み、ぽかぽか。フリースを脱ぎ、パーカーを脱ぎ、長袖Tシャツ一枚になっても汗ばむほど。 この暖かさがちょっと災いしたのか、お昼、母の体温は少々上がったとか。 「年配の方は周囲の基本にも体温が左右されますからね」 介護士のお兄さんが教えてくれた。 この日、年賀状を手にする母の写真を携帯で撮った。入院先から年末年始だけ帰宅を許された姉に送ろうと思って。 姉は帰宅した前日に、母の入院について、夫、ぼくにとっては義兄から聞いたばかりだった。12月の初旬に大学病院に入院してから姉が母の姿を見たのは、この写真が初めてだったかもしれない。 ベッドに体を少し起こし、年賀状を手に、ちょっとおどけたような表情に見える母の写真。 話すことが出来る最後の写真となった。今のところは。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.05.02 09:23:31
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