シンさん横恋慕
サクとテンサクとシンさん 昨晩はえらい騒ぎであった。 新入りサクは、カゴからどうやって出て良いかわからないものの、飛び回っている文鳥たちの仲間に入りたいらしく、「文鳥キック」を繰り返すので、カゴの中で捕獲してテーブルの上に置いた。ところが、広いところで飛んだことがないくせに落ち着きのないサクは、着地点を定めずに無茶飛びを始め、こちらの壁に当たって落下、あちらのカーテンにしがみついてから落下、さらに遁走してホコリまみれになるなど、まったく危険極まりない行動を繰り返した。 それが一段落し、ようやくカーテンレールで息を整えると、早速テンが近づき、親密な様子を示し始めた。願ってもない展開にほくそ笑んでいたが、すぐに邪魔が入った。交尾目当てのオスどもだ。その連中を避け、サクが箱巣の上に逃れると、それを待っていたようにシンさんが接近、テンを追い払い、得意の「住宅展示場」デートに誘い始めた。 で、サクだ。喜んで、というのか、当然、といった様子で箱巣に入り込んだものだから、シンさんは喜び、飼い主は愕然となった。・・・このままでは、シンさんとカップルになってしまうではないか! やもめのシンさんは、現在換羽中で、メスを追いかけるようなこともしていなかったので、『婚活』を始めるとは、まったくの想定外であった。相思相愛なら、それも良し、としたいところだが、それでは喫緊の課題であるテンと孫の孫ニチィの恋愛阻止が果たせなくなる。 思うに、サクは、「廃用」(これは言葉が悪すぎるなぁ)、繁殖を「退役」になったメス文鳥なのだろう。箱巣を用い、白と桜をペアにする、となると、愛知県弥富の繁殖農家を連想するが、そこで2年ほど頑張ったのではなかろうか。流れ流れ、「退役」で捨て値だったはずが、4,980円で売られるに至る流通過程は定かでない。ないが、我が家の後妻としては好都合な存在と言える。「退役」でも、テンやシンさんより若い可能性が大きいので、問題なし。 結局、T字止まり木を外したカゴにサクを早々に戻し、放鳥終了後、指に止まったテンをそのカゴに導き入れた。さっさと同居させ、夫婦にしてしまうことにしたのだ。 そして、現在まで、それなりに仲良く一緒に生活している。・・・これで丸く収まってくれるのか、神のみぞ知る・・・、・・・神の知ったことか、と言われそうな気もする。