文鳥は日本人が育んだ飼鳥なのだ
のぞくな!とご立腹のイトはん 猛女の監視の目をかいくぐり、アラの開眼と、翼の白い羽を確認した↓。・・・何となく嬉しい。 さて、Japanese ricebirddeと言えば、数ヶ月前に購入した古本、『決定版ペットバード百科』(デビッド・アルダートン著 島森尚子訳 1997年誠文堂新光社 なんと定価は3,500円税抜という高級?本なのだ!!)を思い出した。著者は「英国飼鳥協会の前会長」で「(アメリカ合衆国において)鳥類に関するコンサルタントとして活躍」され、「ペットの飼い方と博物学に関する著作は25冊以上に及」ぶとのあるが、残念ながら、文鳥に関してはトンチンカンなことしか書いていない(訳出されている島森氏は、東京ピイチク会の会員であり、動物専門学校でコンパニオンバードについて講義をされている方とのことだが、「オウム・インコ類の魅力にとりつかれ」とあるので、この段階では、文鳥についてはあまりお詳しくなかったのかもしれない)。 「白ブンチョウの歴史は長く、400年も前に中国で初めて作出されたと考えられています」とある。しかし、これは、日本と中国の区別ができず、白文鳥(Japanese ricebird)と文鳥(ricebird)を混同でもしない限り、思いつかない内容だろう。「ブンチョウの飼い鳥としての歴史は長く、400年も前に中国や日本で飼育され、白ブンチョウは日本で作出された」とあれば、文句を言う隙がなさそうだが、そうした歴史的事実を踏まえた模範解答から程遠く、筆記問題の回答としては0点と言わねばならない。 頭頂部からクチバシにかけて白い羽が多めに出ている文鳥の写真があり(カバー表紙にも使用)、「フォーンのオス」とキャプションがついているのも奇妙だ。説明文には、「フォーンは1950年代後半にオーストラリアのアデレイドの巣引き場で最初に現われ、それから世界中に広まりました」とあるのだが、この世界中に日本は含まれないのではなかろうか。頭に白い差毛が、大きな花模様のようにある桜文鳥なら、我らが日本国には、100年前から今日只今これを見ている人の目の前にも、普通に存在するのである。 シナモン文鳥のことを、フォーン文鳥と呼びたがる人は、日本にも稀にいるようだが、このフォーンはfawnで薄茶色の意味だ。一方、この書物の「フォーン」が何を意味するのであろうか?パイドには全身有色の多いものから白に近いものまでいろいろなバリエーションがあるといった説明があるので、著者は中間雑種のごま塩柄を含む桜文鳥をパイド(paid=ぶち模様)と見なしているのは明らかだ。となれば、挿絵のキャプションを「パイド」とすべきところを「フォーン」としてしまっただけのようにも思える。ところが、「フォーンパイドと白ブンチョウをかけ合わせるとフォーンパイドが生まれます」とあるのは、どのように解釈すれば良いのだろう?この「フォーンパイド」なるものが、字義通り白斑のあるシナモン文鳥とするなら、白文鳥の色因子に対して劣性のシナモン因子が、子供の表現型となることは、通常有り得ない。 他にも、「抱卵期間は14日」との間違い(正解は16もしくは17日)、若鳥は「胸に縞模様がある」といった理解不能なことまで書いてある。それも、たった1ページの文鳥についての説明の中でのことだ。これでは、「文鳥に関してはトンチンカンなことしか書いていない」と連呼されても、反論できまい。もちろん、文鳥の説明がされているたった1ページだけを見て、この本の価値を測るのは不当だ。しかし、そのたった1ページで他を読む気力が失せて、数ヶ月間うっちゃっておいたのも事実である。何とも、遺憾とするところだ。