売れ残るほど高くする
門外不出の14代目ニチィ 文鳥を売っているペットショップが、めっきり少なくなった。引っ越してから2年にしかならないが、その間、自転車圏内にあった2軒は消滅し、その他にも、引っ越してくる以前に廃業したお店跡を2軒見かける。つまり、10年前にはいろいろ見て歩けたはずが、今現在は、電車なりバスなりを利用しない限り、販売されている文鳥を見る機会に恵まれないことになっている。 それ自体は、仕方の無いところだが、飼育用品の入手が難しくなり用品屋を始めたくらいなので、生体が入手困難になれば、考えないといけないかもしれない。それはそれで、個人的には剣呑なのである。 思うに、手のり文鳥を売る形態として、店舗のカゴに並べるのは無理がある。手乗りの状態を継続するには、一緒に遊んでやる時間が必須だが、それをお客さんが出入りする店舗で行うのは、なかなかに難しいのである。結果、最近では、インコ系を中心に、普通の家庭の室内で手乗り化した小鳥を販売する形態が出現しつつあり、中には、文鳥を取り扱っているケースもある。この方が、手乗りの販売形態としては、むしろ自然で、今後は、文鳥でもそういった形態が増えていくのではなかろうか。趣味が高じて、マンションの一室などで手乗り化し、それなりに高額で販売することが、一般化していくという未来像だ。 そもそも、昔の繁殖家の考えでは、庭に禽舎を作ったり、小屋の建ててその中にカゴを設置して繁殖させるような発想が多かった。と言うより、そういった発想しかなかったように思える。しかし、それが、都市化の進行や住環境に関する権利意識の向上などがあって、かえって騒音問題に発展する事態となるし(昔からやっていたことが、新たにやって来て住み着いた人たちに否定されてしまう。実に気の毒なのだが、新住民の立場では、過密地域に非常識な人がいることになってしまう)、その環境では手乗り化の『訓練』は難しい。つまり、気密性・防音性の優れた室内で、『訓練』して(芸を教えるのではなく、基本的には遊ぶこと)、手乗りとしての社会性を付加した上で、販売(譲渡?)するのは、理にかなった方法だと思うのである。 となれば、そのようにして販売を前提に育てた手乗り文鳥は、どの程度の市場価格が適切か、考えてしまうのが、文鳥マニアとしての行きがかり上の必然であろう。考え方は人それぞれだと思うが、私なら次のような考え方をする。 まず、自家繁殖で生まれたヒナなら、孵化14~16日目に親鳥から引き継いで、数日後の18日目あたりまで、人工給餌してから売り出す。自分で育てたい人は、なるべく早く自分で育てたいと思うかもしれないが、意気込みはあっても経験がないと、給餌に慣れないヒナを持て余す可能性があるので、そういった人の存在を考えれば、数日は必要だろう。その際の価格は、昔調べた桜のヒナの平均価格が2,000円程度だったので、とりあえず、税込2,500円としておこう。 その後は、手乗り文鳥になるように、将来の飼い主に変わって育てている期間なので、当然、日に日に価格が上がっていく。わかりやすく1日100円くらいが妥当ではなかろうか。それを、どんどん積み上げていく。19日目なら2,600円・・・30日目なら3,700円といった具合だ。ようするに、売れ残れば売れ残るほど高くなる。そうしていくと、孵化約3ヶ月で10,000円となるので、そのあたりを上限にする。その頃にはオスかメスかわかるはずなので、手乗りの成鳥価格として固定してしまう。また、手乗り文鳥では、オスにはオスの需要、メスにはメスの需要があるので、性別の価格差は設けない。 個人的には、他の品種も同じ価格で良いと思うが、市場で高値安定のシルバーばかり売れ、桜文鳥ばかりが売れ残ると癪なので(価値は価格ではなく自分の好みで決めるものだろう。同じ価格でも桜文鳥が好きなら桜を選ぶのが理の当然)、同じ値段でも、、白、シナモン、シルバーと、18日目当初の価格を500円ずつ高価に設定する。もちろん、日々の手間暇は一緒なので、桜文鳥同様に1日100円ずつ上げていく。しかし、成鳥で500円の差だと、市場感覚とズレてしまうので、孵化3ヶ月を経過して性別がわかった時点で、最初の比率に揃える。2,500円:3,000円:3,500円:4,000円としたので、白12,000円、シナモン14,000円、シルバー16,000円となる。 しかし、それなりに副業にはなっても、本業としようとすれば、それなりに防音性が高く、いかに文鳥が「サイレント」でも、飼育数が多く必要になり、問題が生じることにもなり、手乗りとして社会性を持たせる『訓練』も難しくなる。 なお、『訓練』と言っても、文鳥の場合なら、1日に数回、カゴから短時間放鳥して指に乗せて帰すことで帰宅に慣れさせることと、短時間放鳥の際に遊具その他やいろいろな色を見慣れさせておく程度で良いと思う(ベタ慣れは飼い主を伴侶と認識して起きる現象なので『訓練』は出来ない)。しかし、それだけでも、何十羽を相手にするのは無理だろう。 継続させるためには、種鳥が必要で、私的に飼育する自分の愛鳥をその位置づけにするのに抵抗があれば、外部から非手乗りを数羽ずつ仕入れ、そこからペアリングし、2年ほどで繁殖を頑張ってもらい、順次交代していく(ペアは余力のある状態で、当然繁殖経験を明示の上、ペア購入希望者に売る) 、といった方法論もあるだろう。 新しい、ブリーダー形態の進展を、今後楽しみにしたいところだ。