第10回FPシンポジウムに参加~「大きな物語」終了後の投資態度とは?
去る平成22年2月13日(土)、早稲田大学国際会議場にて、第10回FPシンポジウムが行われ、わたしも参加して来た。2年ぶりの参加となった訳だが、会場は何となく寂しい雰囲気だ。一昔前は、協賛企業のブースが設けられて、何かと賑わっていた。今回は、主催者側のテキストだけが、唯一のおみやげになった。さて今回は、「リーマンショック」後、FPは顧客に何を提案していくべきか、という敗戦処理っぽい雰囲気のテーマとなった。まずは、三菱UFJ証券チーフエコノミスト水野和夫氏による講演から始まった。テキストを見て驚いたのは、これは世界史の勉強からスタートか!ということだった。およそ16世紀から現在に至るまでの、資本主義経済の歴史を振り返りつつ、21世紀は、成長=インフレという 「大きな物語」 が終わるという。大きな物語の終焉?わたしは香山リカ先生の本の中で 「ポストモダン社会の悪夢」 という項を思い出す。大きな物語小さな物語、産業情報、生産消費、統合分裂、真面目遊び、オリジナルコピー・・・等等、経済を語る以前に人間の精神そのものが矮小化していくような恐怖とつまらなさを、リアルに感じたものだ。ポストモダン的な態度=それぞれの小さな物語とやらが、多数に就こうとするゲームや「演技」に人々を追いやり、その結果としての 「リーマンショック」 ではなかったか。テキストでは、「3つの9.11」を、「大きな物語からの転換点」と位置づけていた。そこから25世紀ぐらいまで同じ状態が続くのはご免被る。リーマンショックこそ、「9.11」からの転換(=卒業)を模索すべきだと思う。水野和夫氏の著書ポストモダン社会は悪夢?確定拠出年金制度が一部改正に?続いては、税理士の先生による、税制改正の留意事項について。注目したのは、企業型確定拠出年金について 「マッチング拠出」 を認める、という改正案。企業型確定拠出年金について、これまで企業だけが掛け金を支払うものとされてきたが、従業員も掛け金を拠出することを可能にする。もちろん、自分で積み立てた分は 「小規模企業共済等掛金控除」 を認める。 個人の選択肢が広がることとなるが、これが確定拠出年金の普及を促す起爆剤になるかは不明。DCプランナー試験のテキスト内容も変更が出てくるかも知れない。ご存知のとおり、運用状況の悪化で、401Kをやっている方の多くが元本割れしているという。超長期の運用を大前提にせねばならず、しかも分散投資に対する理解や、確固とした投資哲学を持たないと、本当に難しい。リスクを恐れて、元本確保型商品だけにしていると、年間維持管理手数料がどんどん差し引かれて減ってくばかり、ということにもなる。ビスマルク宰相がこれを見たら「税の優遇を受けられるだけの証券口座じゃのう」とボヤくだろうな・・・。銀行窓販の投資信託は「信託期間無期限」が多い~投機でなく投資というスタンスだから?最後の講演は、「FPのための、リスク性商品販売の勘所」ということで、独立系FPとして活躍されている先生の講演があった。投資信託を販売する銀行員向けのお話である。 とにかく、投資をするということは、10年単位で考えなければならない、ということだ。投資家が最も有利な点、それは時間を味方につけることが出来る、それはよく教わったことだし、自分も実践しているつもりでいる。それを言うなら、定年退職した人は、投資はやめるべきだという理屈も出てこよう。それこそ 「401Kを自分で運営しているぐらいのつもりで!」 というなら、リスクコントロールの理論は有効と言える。それと、投資をする時は、徹底的に分散投資をせねばならない・・・これも自分で心がけている。例えば、自分が保有している投資信託は、全て元本割れしている(!)が、日本株+金の積立+MRFやら外貨MMFやらを含めた総合成績では、なぜかプラスを維持しているのだ。リーマンショックにも耐えた!という訳だから、講師の先生の説明が、正しかったことを証明している。現在の運用成績金積立に助けられることもだが、今後どうなるのかは、やっぱり分からない。その人の投資態度が、成功だったか失敗だったかが最終的に判明するのは、「その人が死んだ時です」 ということも言える。両親が、投資から足を洗った理由は、「結果が分かる前に死んだら元も子もないから」 というもの。10年20年単位で考えることが出来ない、あるいは不適当な場合はどうすればいいのだろうか。 そこでふと、わたし自身が「なぜ投資を始めようと思った?」と初心に帰ってみることになる。理由は一つ、インフレだ。インフレになると、せっかく貯めた貯金も実質価値が目減りしてしまう。極端な例は、アフリカのジンバブエで起きたハイパーインフレであろうか。自国通貨も投資資産と認識するのなら、資産を分散すること=海外投資が意味を持ってくる。インフレにならず、海外投資部門が目減りすれば、「自分の普通預金が強いのだから、いいじゃないか」と解釈できる。 ←紙幣が紙くずになった極端な例 こうした「消極的な保険理論」が、わたし自身の勝手な哲学となって今日に至っている。今回先生の講演であった「分散」「時間」という概念を、リスク管理の目標の一つに加えて行こうと思う。