君の名はカフェ~数々の名場面を再現するも、口噛み酒だけはどうにもならぬようで・・・
東宝の株主として素直に喜んでいる。株価も上がったし、配当も増額される予定。自分の投資方針も見当違いでは無かったという満足感に浸れた。この映画のヒットは、阪急東宝グループの創始者小林一三の掲げた「大衆第一主義」~この理想を極限まで達成したものだと思う。既に大ヒットに対するやっかみのような、自分の頭を良く見せたいような批評家の辛口批評がキノコタケノコのように生え始め、キネマ旬報ベストテンも余裕で圏外(笑)~批評する知識もコトバも持たない市井の人々との感覚の違いも味わい深くなってきた。 その理由について小林よしのり氏は、「評論家が好む映画には「言葉」や「理屈」がべったり張り付いている。だが、庶民が夢中になる映画は「無意識」で何かを感じているのだが、それを言葉に昇華できない。」と指摘し、まさにその通りという感じ。若い人々がこの映画に熱狂していることを評論家がうまく分析できないことについて、「これからの世界を創造する未来人の「感覚」だから仕方がない」と言ってのけた。拍手喝采である。 既存メディアが明らかに周回遅れで追随しているのも味わい深く、結局のところ一般庶民が「理屈」でなく「感覚」で何もかもひっくり返した訳である。例えは悪いがトランプを大統領にしちゃったように・・・。 気難しい話は終わりだ。あの「ブタ」を話題にするとご飯がおいしくなくなる。今回は池袋パルコの「君の名はカフェ」に行ったことを書こうとしたのだ。いい年してそんなミーハーな行為に走る拙者に違和感を指摘する同僚もいたが、理由は結構明確だった。まずは嫁さんとすごす時間について。夫婦二人というのは結局のところ二人の世界でしかない訳で、それなりに工夫が要る。近所にコメダ珈琲しかなく、マンネリ化を避けたかったこと。それと、同僚の若い御家人衆と共通の話題になり得る数少ないネタとして有効なこと。それと、拙者が典型的な甘党で、「入れ替わった三葉が思わず写真を撮りたくなったパンケーキ」を食べたかったということ・・・。苦労して整理券を手に入れ、ゲミュートリッヒな時間を過ごすこんな美しいカフェを拙者は見たことがない。ただのカフェスペースのはずが、新海ワールド特有の美しすぎる青空を加えただけで、何故こんなに人をワクワクさせるのであろうか。これは魔術としか言いようがないな。間接照明は「黄昏時」を彷彿とさせる。冷静に考えると大した設備でもないのにこのクオリティの高さは何であろう。飲み物の注文は初めから決めていて、瀧がノートに書いた「お前は誰だ?」のラテ。飲み始めても文字がなかなか消えない。すごい技術だよなと感心する。食べる方だが、「司と高木からもらったタマゴサンドとコロッケで作るコロッケパン」をチョイス。入れ替わった三葉が半日がかりで学校へたどり着き、瀧の友達から昼飯を分けてもらう訳だが、自分のことを「わたし」と言うもんだから司と高木が「はぁ?」と不審に思う場面が秀逸。 そしてシメは「瀧と入れ替わった三葉も思わず写真を撮りたくなったパンケーキ」である。何と!パンケーキの上には、入れ替わった三葉が撮っていた携帯がモナカで再現されている。さすがにモナカの皮だけだから味は全くしないものの、すごい技術だよな。さらにその上からあの場面をやってみて下さいという訳だ。ビジュアル的要素に気を取られて味なんか忘れてしまうが、三葉が感じたワクワク感を同じように味わい、自分も何かに浸れるのである。崩すのがもったいない、写真を撮らずにはいられない一品である。そういえば、この映画は食べるシーンがさり気なく多いので、メニューもそれに応じて豊富である。中には、瀧がアルバイトしているお店(モデルとなったお店まで巡礼者が殺到しているとか)のピザ(爪楊枝がちゃんと刺さっている!)もある。ただし、ドラマの大きなカギとなる三葉の口噛み酒だけは残念ながら売っていない。この口噛み酒について、ネット世界の皆様のいろんな「妄想」を読ませていただき、腹抱えて笑った。実際はどんな味なのか想像もつかないが、これだけは妄想に留めておいたほうがいいだろう。