宝塚歌劇「エリザベート」~感動的だった「夜のボート」
休憩を挟んでお芝居も大詰め。狂言回し役のルケーニから、思いがけないアドリブが。「ボクのような悪党でも、池田泉州銀行ならお金を預けてもらえるのかなぁー!」にお客さんは大爆笑だ。やっぱり何か一つカマしてくれんとね。終盤で忘れがたいシーンがある。息子ルドルフが愛人と心中自殺した後、心に大きな傷を負った皇帝夫妻が久々に出会う場面だ。かつてはそれなりの美青年だった皇帝ヨーゼフも、すっかり年老いてしまっている。その頃のヨーゼフは、まったくその通りの年齢を重ねた男の姿なのであるが、まさかタカラジェンヌたるものに禿頭のカツラを被せる訳にもいかず、そこはうまく誤魔化していたが・・・。 二艘のボートのようなわたしたち、近づくけれどもすれ違うだけで、人生の終着点も永遠に定まらない・・・とデュエットで歌う場面が切ない。二人が歌う背後に、名も無き老夫婦が肩を寄せ合って歩いている。その老夫婦は、まさか皇帝夫妻がいるとも知らず、その辺のベンチに腰掛け、しばらくしてからまた立ち上がり、お互い身を寄せ合いながら舞台から消えて行った。皇帝夫妻との対比を強く印象付けるシーンである。 強く惹かれ合って結ばれたはずなのに、すれ違ってしまう夫婦もいる。また、お互いなぜこの相手なのか本当はよく分からないまま、一生添い遂げる夫婦もいる。何とも不思議ではあるが、その不思議は常にあちこちで起きている。既婚者として何とも複雑な思いでこの場面を見ていた。エリザベートが無政府主義者ルイジ・ルケーニの持つ鋭利なヤスリで刺殺され、黄泉の帝王トートに導かれて天に召されて、あゝめでたしめでたし・・・などとしんみりした余韻に浸る余裕など無かった。すぐさま、上半身だけ近衛兵の軍服に身を包んだ若手のジェンヌさん達が「わーっ」と繰り出してきて、賑やかな音楽と共に「ヤッ!」の掛け声も晴れやかにラインダンスがスタート。 お芝居が長過ぎたので、ショーは大急ぎで展開せねばならぬようだ。これまでの悲劇的な舞台は何だったの?気のせいでしょ、というぐらいの落差。これぞタカラヅカだ。背後では大階段が登場!とっくに死んだはずのエリザベートも優雅にダンスを踊ってやんやの喝采。もうお芝居のことは忘れましょう。その他、スター達のパフォーマンスやダンスがしばし続いた後、大階段の最上階からスター達が順番に降りてくる。楽曲は、お芝居で奏でられてきたテーマ曲をフィナーレ用に明るく元気に改変、死んだ人も生き残った人も、欧州貴族の衣装を着て観客にお礼のパフォーマンス。もう絵に描いたようなタカラヅカって感じ。お客さんもこの通り大盛り上がり。大盛況のうちに幕を閉じた。公演を終えて、大勢の人達とゾロゾロと退場。ものすごい混雑だが、我々は宝塚南口方面に向かうことにした。宝塚大橋を渡りたかったのである。もう6時を過ぎ、小雨交じりの天気故、大した眺望は望めないのだが、お昼時の晴天ならの素晴らしい景色が拝める。宝塚南口駅から今津線で西宮北口へ向かい、そこから神戸線に乗り換えて梅田駅へ。乗った電車は最新の1000系だった。最新だろうが、相変わらずザッハートルテのようにチョコレート色に塗りたくっているのが阪急電車である。もう阪急電車に乗ることは久しくないだろうと思うと、家族と離ればなれになるような寂しさを感じる。相当なヲタだよな(笑)。夕食をどうしようか?大劇場の「ラ・ロンド」でサンドイッチとケーキを食べたのだが、意外に腹持ちがいいので軽くささっと済ませたい。こういう時に良さげなのが「阪神百貨店スナックパーク」である。株主向け報告書に阪神百貨店建て替えのニュースが載っていたが、半分だけ出来たというので見学がてら行ってみる。阪神百貨店といえば、食べ物安いというイメージなんだけど、スナックパークは正にそのイメージ通りである。立ち食い専門でお世辞にもお行儀よくないが、高くてもせいぜい700円くらい。軽く食べるだけなら最適で、それを梅田の百貨店で実現してしまうのが阪神百貨店なのである。嫁さんは丼モノ、拙者は和洋折衷なパスタを食べ、締めに御座候を買っても一人千円以内で済むのだから、さすが阪神百貨店!どうせなら阪神百貨店も時間許す限り見学してきた。お目当ては阪神タイガースショップ。マネキンの演出が何ともかわいい。新しいグッズが出ているかチェックしているうちに、またもや時間が過ぎていく。平成30年9月1日はようやくこの辺でお開きとなりそうだ。→タカラヅカの写真はこちらのページでも