天気の子~これを見て昭和のオッサンは小松左京の影を背後に感じる
女子校生「三葉」の盗撮動画をヘラヘラと見入る帆高、へぇーそんな娘がタイプなんだぁーとヤキモチを焼く陽菜・・・ソフトバンクのコラボCMを見て「引きずってますねー感満載でちょっと心配に」なった。PRに三葉お姉さんの援軍が必要な状況なら東宝の株価にかかわるやろ?という二重三重の不安だ。今のところ客足は順調のようだが・・・。もういてもたってもいられなくなった。去る8月4日(日)~やっぱり陽菜さんにこの天気をどうにかして~と思いたくなる暑さのなか、国電を乗り継いで日比谷までやって来た。新しく開業した東宝シネマ日比谷に行きたかったのだ!東宝シネマ日比谷は、東京ミッドタウンの中核テナントと言える巨大な映画館だ。入口には狛犬のようにゴジラが鎮座。最近、ゴジラ検定まで登場したらしい。東宝が後援する本格的な検定だそうで、既にゴジラは学問の領域にあるってことか。4階から外を見ると、皇居のお堀や帝国劇場などが俯瞰でき、まさに立地は超一等地なり。株主優待券でチケットを購入し、待ち時間はグッズを物色した。天気の子コーナーに交じっていたのは「君の名は。」の売れ残り?グッズ。引きずってますねー感がここにも現れている。もっとも、ここでいい買い物も出来た。それは、天気の子シール。長径10cmくらいの楕円シールで、どこに貼るのかというと、「クルマのリアウインドーに貼ってある燃費いいですよPRのシールがダサいから剥がしたいが剥がれないから上から貼ってやる!」のである。君の名は。との類似点と相違点を噛みしめるさて・・・映画を見てて「あっ!瀧君がいる!」とテンションは最高潮!実はソフトバンクのお父さんもいたらしく、油断も隙もない作り込みだよなぁと感嘆。エアコンの性か、ストーリーの性か、見てるうちに寒気でブルブル震えながらの鑑賞であった。やっぱり感じるのは、「君の名は。」との類似点だ。1.「不思議な現象」の遭遇とヒロインとの思いがけない出会い2.「不思議な現象」に戸惑いつつも楽しかったあの日々3.あるきっかけでヒロインが絶体絶命のピンチ!4.主人公は「不思議な現象」の謎を解き明かし、彼女を助けに行く5.二人は再会し、めでたしめでたし基本的な構図は同じだけど、受け取れるメッセージ性みたいなモノは随分と異なる。「君の名は。」のシナリオは、東日本大震災の影響を多分に受けていた。地震を隕石衝突に置き換えたようなイメージだが、これは正真正銘の天災だから誰のせいでもない。瀧君の活躍で、三葉をはじめ糸守町の人々が救われたのだから、無条件に万々歳であった。思えばかなりノーテンキなシナリオである。ところが「天気の子」の結末はホロ苦い。異常気象に襲われた東京を救うため、陽菜は自らの命と引き換えに人柱になりかけるが、たとえ東京が水没しても、陽菜の命が大事なんだ!という帆高君の、ある意味若者らしい行動によって、東京は3年降り続く雨によって水没する。見るも無残な街の姿を背景に、二人が固く抱き合うシーンは印象的だ。映画で直接の言及はないものの、この異常気象は文明の発達によって起きた人災であると考えるべきだ。だからこそ、陽菜一人の犠牲によって一時の平穏を享受するというのは明らかに間違っている。東京各地で堤防の工事が進む光景を見て、みんなはどう思ったのだろう。天災に打ち勝とうとする逞しい日本人をイメージしたかも知れないが、あのシーンは「結局、場当たり的で根本解決にはなっていない」ことを暗示するシーンにも感じる。瀧君の祖母が、住んでた街は江戸時代は海だった、昔に戻っただけなのよ、と言う。自然災害に対する日本人特有の諦観を示しているが、ここで諦めてはやっぱり問題の解決にはならない。諸問題の根源は自分達にある。Eテレで小松左京の特集をやってる時に出演者が述べていたが、我々は将来に向けて常に創造していかねばならない!と言っていた。この映画から、少なくとも感じることを感じ取って、自分の思うところを実践につなげて行くことは大人の義務であろう。「君の名は。」の描いた日本は、まるで観光庁が依頼したPR動画のようでもあった。東京はカフェや複合施設が建ち並ぶ華やかな街だし、糸守町の風景は、世界でも類を見ない日本の美しい自然を象徴しているようなものだ。それに比べて「天気の子」が描く東京は、貧富の差が極限に広がった嫌ゃーな街で、地の底はディープで不潔で支離滅裂である。作品にリアリティを出すために多くの実在の商品がそのまま出ており、企業にとって宣伝になっとるようだが、残念ながら「底辺の暮らし」を表現するために利用されていた。もう東京なんかぶっ壊せ!そう囁く透明なゴジラが存在しているかのようだ。そこに、クラシックな社会派SF臭を感じる。さて、本当に東京をぶっ壊した新海誠先生は、次に何を仕掛けるのであろう。いよいよ日本沈没か人類滅亡か?宮崎駿監督が、あれだけとんがったSFを作っておきながら、晩年は懐古趣味に舵を切ったような、「ある意味終わった」ということはあるまい。次回作に期待!