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カテゴリ:伊豆・箱根
小田原といえば抹香町である。昔から一度行ってみたいとは思っていたが、なかなか機会がなかった。抹香町は既に地図上から抹殺された地名であるが、だいたいの場所は調べ上げていた。
小田原駅から銀座通りを海のほうへと向かう。七枚橋の交差点を渡り、蓮上院、善照寺の前を通り過ぎ、次の路地を左に曲がる。「このあたりだろうか?」とキョロキョロすると狭い路地の奥に古そうな民家が見えてきた。 昔、田圃であった一廓には、トタン屋根の平屋ばかり、三四十軒ごみごみ並んで居り、一間道路や、三尺路地には、ちらほら、ひやかし客など歩いていた。家々の入口や、門のように柱のたったあたり、うちわもった女達が、しゃがんだり、立ったりして、蓮っぱな声を散らしていた。 川崎長太郎著「抹香町」 たぶんここに間違いないはずだ。もう完全になくなっているかと思ったが、ここまで残っていたとは驚きである。当時の様子が目に浮かぶようだった。 ある家のガラス土の上のほうに「抹香町」の文字が見えた。やっぱり間違いない。あまりうろちょろしていると怪しまれるので、足早に通りすぎた。 抹香町から程近いところに〈柳屋〉があった。4時開店らしいが、到着したのは4時前だった。暖簾は出ていたがもう入っていいものかどうか一瞬迷った。 すると、店の前にタクシーがとまり、常連客らしき男性がひとり店の中へ入っていった。それに続けとばかり私も中へ入ることにした。 カウンター席に座るとおじいさんと若い衆がジロリと私を睨んだ。「いらっしゃいませ」の声もかからない。恐る恐る「ホッピーください」と注文したところ、返事がない。「これはまずいことになったな」とびびりながらホッピーを待った。幸運なことにホッピーは出てきた。少し安心して、レバ刺しを頼んだ。 レバは半分凍っていた。「こりゃダメだ」と思ったが、ミソダレが案外うまく、タマネギのみじん切りもベストマッチでこれはいける。このミソダレは何だろう?ミソとニンニクにタマゴの黄身が入っているような味である。この味は気に入ってしまった。 ホッピーはいまいちだったので、レモンサワーに切り替える。このサワーはまあまあだ。 煮込みはダイコン、ゴボウ、コンニャクなどが入った普通の煮込みだった。この煮込みには明日はないだろうと思う。 タン焼きとカシラニンニクを追加。ボリュームがあってぜんぶ食べきれない。この店は複数人できたほうがいいようだ。ひとり向きの店ではない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 5, 2007 09:05:50 PM
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