アナログは回る。
CDで音楽を聞く環境から、ネットを使った音楽配信が始まって結構な時間が経ったが、自分は未だに時間があればアナログ盤を聞いている。 一時は全てのアナログ盤を処分して、そのお金で同じ内容のCDにしようとも考えたのだが、同じ内容のCDが結局出なかったり、ジャケットが気に入っていて手放せなかったものが何枚か残り、その後オークションで少しずつ買っていくうちに(買戻しもあり)数十枚のアナログ盤が揃ってしまった。 アナログ盤の魅力については熱狂的なファンの方々が色々な側面から賛辞を書かれているので、そちらを読んでいただけば良いかなと思うのだが、自分的に気に入っていることはと言えば、「全てを晒さない」ことが一番かなと思う。 全てを晒さない・・・要はクリアで、「まるで目の前で演奏しているかのような」と言う形容があるが、自分はあえてそこまで求めない様にしている。モヤッていても、何となく聞き取れなくても、高音のヌケがどうのとか、シンバルのシャ~ンがどうのとか気にしない(これはあくまでもアナログ盤に関することなので誤解の無いように)。雰囲気、空気、匂い?が感じられればそれでOKなのだ。それでいいのか?と聞かれれば「もちろん」と答えるし、聞こえてくる音に自分なりの解釈、想像を加えることが面白いのだ。この辺りは写真や映像に似ているのかも知れない。 クリアで、すべてにピントのあった画よりも、どこかにピンとはあっているのだが、その他の所はボケている・・・そんな味のある画が好きなように。 そして、一般論だがジャケットのサイズがいい。ほぼ300ミリ少々の四角いジャケット。この大きさがいい。10インチ盤のジャケットではダメだ。この大きさの中に素晴らしい写真やイラスト、そして絶妙なバランスで文字が配置されている。全てがある程度はっきりと見えることが必要だ。CDの様な、わずか120ミリ四方と言うサイズでは迫力に欠けるし、プラスチックのケースに入って、ぺらぺらの紙が挟まれているなんて・・・自分でも沢山CDを持っているが、本当にダメだなぁと思う。加えれば、紙ジャケット仕様なんて企画、誰が始めたのか?どうせやるのなら、LPサイズのジャケットを作って、その中にCD入れるくらいのことをして欲しいものだと思う。 更に、何よりもリズムがいい。 演奏のリズムでなく、聴く方の身体にいいと言おうか?20~30分程度でB面にチェンジする為に一息つける。この間が大事なのだ。CDで一気に60~70分。聞けないことはないが、やっぱり疲れる。クラシックのように全楽章がAB面に分断されないのはよいことだが、ジャズに関しては疑問だ。コルトレーンの「アセンション」を一気に聞く気にはなれないなぁ。ライブ盤もしかり。 そしてそして、ここからは視点が大きく変わるのだが、最近のオークションに大量に出始めている名盤の数々。想像するに、オーナーさんが亡くなりご家族が遺品整理も兼ねてリサイクルや専門店に売りに出されたものが多いような気がする。ジャズの名盤とは言え、興味のない人にとってはごく普通のLPである。かくして、徴集された名盤の数々も時代と共に世の中を回り始める。 今夜も私と同じようにアナログ盤に針を落としつつグラスを傾けている人が沢山居ることを祈って。さぁ、一緒にお皿を回しましょう。Hank Jones / ”Jam at Basie featuring Hank Jones” [アナログ盤LP](CD)