いい時代・・・なのかな?
自分がまだジャズをかじり始めた頃、楽器といえばヤマハ。そしてセルマー。そして「その他」(その中にはYanagisawa,King,Conn,Cramponなどが含まれていた)と言う非常に大雑把なサックス製造世界勢力図?のようなものがあった。今考えれば、それはその頃の自分の(せいぜいチューボーの情報網ですから)世界の狭さからくるものだったのかもしれないが、逆に言えば、選択肢(的)が少なく(狭く)、「バイトしてお金ためて、いつかはセルマー」とか言えていた時代だった。 それに比べて、今の時代は、いい時代なのかな?まさに群雄割拠と言う感じにサックスの製造メーカーが名乗りをあげ、「ビンテージ色」を旗印に果敢に新製品を出してくると言う様相だ。90年代後半から出始めた台湾、中国製のサックス。そして、そのサックスを輸入元として売り始めた大手楽器店(自社ブランドだね)。当時のものはびっくりする位使えなかった。実際に吹きに行くと、まともに音が出るものの方が少なかったし、キーボタンがぽろっと落ちるなんて当たり前、音が出ても音程があるのかないのか分からないし・・・ともかく評判が悪かったと記憶している。 しかし、現在の台湾、中国製。特に台湾製のサックスは素晴らしいものが増えてきている。筆頭はカドソンだろう。使用しているプロの方々も錚々たる顔ぶれだし、値段も手ごろ。今でも注目度は高い。 勿論、元祖セルマーも暗黒の時代を乗り越えて、ちょっと違う方向性にも見えるが、限定シリーズやリファレンスはマーク6を彷彿とさせるいいできばえに「戻って」来ていると思う。ヤマハも、カスタムZシリーズが素晴らしい出来だし(現在の私のメイン楽器でもある)さすがはヤマハとうなることしきり。 少し前に、ビンテージビンテージと宗教じみた宣伝文句で、単なる所有欲だけのために何本の「吹かれるべきサックス」がクローゼットの中で眠っているか・・・そんな不埒な方々には「文化の発展を妨げた罪」で遠島流罪に処したい位だ。使われてこその楽器。そのことを努々忘れてはならない。 少々筋がずれたが、楽器本体だけでなく、マウスピースも製造メーカーが乱立し始めている。リンクとメイヤー、そしてラーセン、セルマー・・・そんなものだったと思う。楽器屋の店頭に並ぶものは。 現在はどうか?楽器屋さんのHPを見れば、ページが一杯になる位、様々なメーカーが「ダークな音色」「パリッとした音色」「ピッチがとりやすい」と言う宣伝文と共に並んでいるし、リードもフランス産だけでなく、南米産のものも入り始めている。 考えてみると、今のプレーヤーたちは、きっと自分たちの時代よりも何倍も大きな選択をしているのかな。これって幸せなのかな?ちょっと不安だ。 まとめとして、単に便利だとか、行き詰ったとか、いろいろ理由はあるだろうけれど、それを「モノ」で解決しようとしないことだ。常に基本を中心に、出来る限りひとつの楽器、ひとつのマウスピースをとことん鳴らしてみる。吹いてみる。そこで、第三者から意見をききつつ頑張って行きたいな。