賢い機械システムと富裕層が支配するアメリカが大勝利すると
Average is Over タイラー・コーエン 2014年 Powering America beyond the age of the great stagnation 大停滞を乗り越えてアメリカを強くする方法 コンピュータシステムが賢くなり、膨大な人間の行動・反応のデータを高速演算して人間知能では知りえないことをはじきだして、商売をシステム化し儲ける事業が急成長しているらしい。アメリカは、Sience, Technology, Engineering, MathematicsとMarketingが重要な経済社会だそうだ。 人材目当ての企業買収が加速していて、転職することをacqhiredと言い、買収と雇用を合わせた造語だそうだ。求められる技能労働者は、真面目で正確で長期安定的で協調的で士気が高く、勉強し続けられる能力を身に着けた者だそうだ。そのような人が多いはずもなく、低技能の人は有期雇用、低賃金雇用、単純労働、直接的な個人サービス労働に従事せざるを得なくなってるそうだ。 労働市場は二極分化し、三人に一人はフリーランスで食ってくのがやっと。起業家が激増しているが、雇われないので仕方なしに起業、例えば、弁護士をくびになり屋台をひくと言うようなことらしい。 賢いコンピュータシステムを使いこなせる技能の高い人々、博士号をとった人々は年収がこの十年で増加し、修士も学士も専門学校出も年収は減っていて、労働参加率は1980年代以降最低の63%になってるらしい。年齢25才から64才の人々で働いていない人は、18%に達し、1960年代の倍だそうだ。障害年金受給者は10年前500万人が、現在820万人までになっているそうだ。刑務所に入っている人は、200万人を超え240万人いるらしい。因みに日本は、6万4千人。 男性の給与は、この40年間で28%減ったそうだ。アメリカの教育省の長官が17歳から24歳の人で4人に3人は、軍隊に不適格者(麻薬、犯罪歴、借金返済滞納、肥満など)と言ったらしい。アメリカは、企業にとって雇いたくない人が増えていると。 それでもアメリカは富裕者が増え15%までになると著者は言う。残りは規格化された単純労働で低賃金となると。標準的にシステム化された事業で中間層は無くなると。規律された仕事を嫌がるアメリカ人はその手の仕事をいやがり最低限の宙ぶらりんのフリーな生活で満足する層が出現しているそうだ。これはアメリカに限った話ではなくベルリンでも増えていると。ベルリンでは5人に一人が福祉の世話になってるがそれはそういう生き方を選んでいると。野心と言う言葉が躊躇される価値観の層らしい。 著者は中南米の移民を受け入れて人口を増やして就労させ、下部構造とし、ロボット、人口知能を装備した生産拠点がアメリカにリショアし、高技能者が人口知能と協業して富裕層となり、軍事力を維持し、国土と資源と技術を保有するアメリカは、「北米の世紀」を実現すると予測している。 低賃金層は家賃の安いテキサスなどの地域へ移住し、そこそこの可処分所得を確保して生活し、地域格差、所得格差、能力格差が二極化した超実力社会でアメリカのユートピアが実現すると言う。 何とも後味の悪い話で勉強になったが、アメリカは、チャールズ ファーガソンが言う通り、知識人からしてPredator Nationのようだ。