1936 有りがたうさん 監督清水宏 主演上原謙
原作は川端康成「有難う」。トーキーの本格化した年の映画だそうだ。伊豆の天城街道を実写ロケしたもので、画期的であったらしい。主演の上原謙は、デビューの翌年だそうだ。 自然体で捉えた作風が清水宏の特徴だそうで、当時の伊豆の様子、子供、人々の様子、仕草がありのままとらえられているのだろう。きれいな仕草に見とれるシーンが多くある。風景、トンネルにも今の面影を逆に探してしまった。 公開が1936年2月27日らしいが、その前日は、2.26事件にあたる。穏やかで礼儀正しい庶民の情愛が丹念に描かれている本作ではあるが、事件の背景にある不況、流浪、娘の身売り、貧富も哀しげに描いてあった。だが、このロードムービーの結末には救われた。当時の国民の気持ちであったのだろう。