小さなカエルが大海原に出たら、その広さにさぞかし驚愕するに違いない。
人間でさえもそうである。
狭い場所にすんだ後に、広いところに引っ越しただけでも、自分の居場所が無くなるくらいに、広さの慣れというものは、微妙な単位も大きく感じるものだ。
しかし、自分自身が大きくなると、それが、わずかな差でも、取り巻く環境の感じ方の変化には驚かされる時もある。
たとえば、小さなときに、過ごした場所が、ものすごく広く感じていたのに、大人になって訪れると、案外と狭いものだということに気づく。
今日は、仕事で、東京の山の手方面に出ていたのだが、帰りのクルマの中で、ふと、自分が育った場所に近づいた。
小学校、中学校と、そこを出ていて、小学校に至っては、創立120年を越えている。
「おお!!ここって、ワシが、卒業した学校があるよ」
同乗者に話しかけていると、どんどんと見覚えのある商店街の道に出て来た。
久しぶりの涙が出るような想い出深い道。
おもちゃ屋や文房具屋、肉屋とか乾物屋、花屋、お菓子屋、パン屋・・
新しい造作でも、見覚えのある町並みがつづく。・・
あのお祭りのあった神社もここにあるのだ。
今では、横浜に住んでいるが、私の幼年期の終わりは、この町で過ごしたのだ!!
しかし、・・
道が狭い!!!
バスが2台やっとすれ違うくらいの2車線の道。
子供の頃は、あの広さに、クルマが来ないとわかっていても、なかなか恐くて渡れないくらい、向こうの道が遠かった。
思わず飛び出して、クルマにはねられて、空中を3回転して、地面に叩き付けられたこともあった。(けがなし)
もちろん、その頃は歩道というものがあまり整備されていなくて、今は歩道が造られているせいで、車道が狭くはなっているのだろうが、それを差し引いても、狭い道だ。
子供の目には、こんな道でも広く見えたんだなあ・・
なんとなく、自分の子供時代のことを考えているうちに、クルマは、新宿に出て来た。
道が広い!!
大人になった今でも、ここを見て、広いと思うということは、やはり広いのだろう。
いや、むしろ、昔の新宿の方が狭かったんだが・・
雨の中を、連休の早朝からの仕事を終えた帰り道、
まるでタイムスリップしたような一瞬・・なんとなく、懐かしい気持ちになれたひとときなのであった。