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2022年05月17日
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二宮先生語録【三九〇】世人書を著はす。多くは是れ空言なり。未だ身を修め家を斉ふる者聞かざるなり。亦未だ荒蕪を墾し衰邑を復する者有るを聞かざるなり。況んや廃国を興すに於てをや。徒に古語を剽掠し、以て空論を拡張するのみ。宜なり。其の実功無きなり。余は則ち然らず。荒蕪を墾し廃家を復して、而る後之を記す。名実全く備る。叔世豈此の如き著書有んや。二三子宜く余が言行を記すべし。余若し自ら記せば、則ち自矜るに似る。二三子之を記せば、則ち仁為り義為り。此を世教と為し、以て千載に伝ふるも、亦何の耻か之れ有ん。

【三九一】俗儒中庸を以て解し難きの書と為す。余を以て之を看るに、人間常行の道、簡易平坦、解すべからざる無き如し。然りと雖も、独り中庸と曰ふ者、猶ほ幼子母に対し何をか賜れと請ふ。辞足らざるに似る。かつ喜怒哀楽の之未だ発せざる之を中と謂ふの語もあり。亦審ならざるに似る。夫れ四極未だ定まらざれば、則ち何の処に中有ん。權の秤星、度の丈尺、未だ定まらざるも亦然り。然らば則ち改め喜怒哀楽未だ発せざる之を元と謂ふ。発して節に中る。之を中と謂ふに、則ち如何ん。伊藤仁斎楽記の錯簡と為すも、亦見非るなり。

【三九二】書を読て身を修めず、徒に口腹の資と為す。索を綯て口腹を養ふ者と、奚ぞ択ん。譬へば農夫鍬を磨て耕さざるなり。仮令万巻の書を誦するも、何の益か之れ有ん。徒に聖人の道を辱るのみ。思はざるべけんや。

【三九三】孔子門弟子の問に答ふる、各々其の器に応ず。譬へば商賈買主の嚢中を察し以て物品を出す如くなり。今夫れ五貫束銭を小児に与へば則ち敢て取らず。必ず曰ふ。百銭を賜へと。苟くも国家を憂ふるの心無んば、則ち之を興国安民の道を説くも、亦何の益か之れ有ん。





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最終更新日  2022年05月17日 19時11分49秒



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