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カテゴリ:報徳記&二宮翁夜話
2022年7月24日(日)
報徳記巻の2 現代語訳「報徳記」巻の2 Ⅲ ビジョン編―報徳は精神変革である― 4 青木村治蹟を読む―現代語訳の試み― 「報徳本教・青木村治蹟」は中央報徳会の機関誌「斯民」に連載されたもので、「本編は二宮尊徳の高弟の一人である故小田又蔵氏が同翁の治績を漢語で記したものである。今広く世に示すことの甚だ有益であることを認め、本会より特別に吉本襄氏に委託して和訳し、ここに掲げることとした」とある。 小田又蔵については、『報徳の森』の「報徳学社徒小田又蔵」に詳しい。この中で『青木村復興記事』が前文と本文一三章、付録とあり、本集の『青木村治蹟』と同様である。又蔵の「先生の無類の大道を書き残し、万代の亀鑑にしたい」という仕法事績の漢文化は弘化三年に始まり、四月二一日又蔵宅を訪れた富田は仕上がった分を見て「至極ノ文体」と感嘆した(『報徳の森』p.142)。「本教」は一、里居、二、小田原、三、物井、四、青木の構想があった(『報徳の庭』p.113に佐々井典比古氏が『報徳学本教第四』の完全な写本を古橋懐古館で発見したとある。) 「青木村治蹟」は「斯民」の創刊号(明治三九年四月二三日)に載り、第二編第一一号(明治四一年二月七日)の「青木村治蹟(九)完」まで都合九回にわたって掲載された。原文は漢語で、著者は幕府の役人で尊徳先生の門人となった小田又蔵である。当時江戸で尊徳先生の事績を漢語で整理し、当時の教養人にその偉大さを理解してもらおうという試みがあった。その一環である。当時の教養階級の上級武士がどのように先生の報徳思想を受け止め、どう理解させようとしていたかが分る。『青木村治蹟』の原文は漢文で読み下しでも難解である。漢文は当時の知的権威の表われで、現代では理解し難いのだが、当時の教養階層は漢文の方が理解しやすかったのだ。『青木村治蹟』で丈八が説く尊徳の所説は小田氏が儒学に則り整理したものであろうが、二宮翁夜話などに見ない格調の高さ、論の壮大さを感じさせる。 「天地は物に私せず仁者は公を以て心と為す。博く施し衆を救ふ能はざるは是堯舜の病めりし所にあらずや。天下に飢ゆる者あるは己れ之を飢やすに由るとは是豈禹稷[禹王と后稷(こうしょく)]の心にあらずや。二宮氏の人と為り堯舜の心ありて禹稷の業ある者なり。鶏鳴て起き孜々(しし)として善を為し将に以て国家の恩に報ひ天地の徳に答へんとす。」 二宮尊徳には中国古代の聖王、堯・舜の心があり、黄河治水の禹王、農業の神で周王朝の創始者后稷の事業にも匹敵するとする。「二宮氏の法(のっ)とる所は、天なり地なり仁なり公なり。健にして息(や)まざるは天の如く柔以て物を養ふは地に似たり。広く人を救ふは仁に非ずや。独り利せざるは公にあらずや。此れ物に親疎なく遠近なき也。且夫れ天地は母銭なり陰陽は之を貸す者なり万物は利得なり。天地は和気を物に貸して其の生を遂げしむ。既に貸して債を責めず既に遂げしめて利息を収めず。(略)雨露の潤は天之を貸すなり。水土の養は地之を仮すなり。而も百穀熟して一粒を収めず、万物育して一品を利せず。語に曰く、惟(これ)天を大と為す、唯(ただ)堯之れに則ると、二宮氏の則る所亦是のみ」 二宮尊徳の無利息金貸付などの仕法の考えは天地の理法に則っており、仁であり、公であると、小田又蔵は当時の武士階級の知的教養層の精神に訴える。 「吾が道は醜に似たれども醜中に美を孕(はら)めり。吾が法は穢に似たれども穢裡に潔を蘊(たくわえ)り。これを名づけて道圃と云ふ。何を以て之を云ふ。人の屎尿馬矢牛骨は固より或は酒糟或は醤粕若くは腐艸若くは杉葉昔人の以て醜穢と為す物に非ずや。這般不清潔の物を用ゐて田畝を培養し以て穀粟菜果等清潔の物を産す。吾が教の道は実に此に胚胎す。」尊徳は、我が道は醜中に美をはらみ、腐穢のうちに潔をたくわえるという。人や馬の便や酒かす醤油かす、落ち葉等で田畑を培養し、穀物や野菜を生じさせる。私の教えは実にここに生まれると説く。 また、青木村の民に「一日の生をぬすみ、父祖の至情にそむくことは何と痛ましいことではないか」と訴える。尊徳先生自ら、現代の私たちに切々と説諭されているかのようである。「一日の生をぬすみ、父祖の至情にそむいてはならない」「お互いに協力し精出して仕事に励めよ、それが孝であり仁である」と。 「汝等その屋舎を視よ汝等の祖汝等の父が瘠土を闢(ひら)き生産を営み千辛万苦して汝等子孫の為めに計を貽(のこ)し汝等をして雨露霜雪の患なく安居棲息して以て生活し得せしめし者皆その膏血(こうけつ)の致す所にあらずや。然るに屋は修補を加へず野は頽蕪を苅らず頽廃に任して、其の滋蔓を擅(ほしいまま)にせしむ。我は恐る、汝等又他郷に出で流離患難して其の所を失はんことを。そも郷里を懐(おも)ふは人情の常なり。その他郷に寓するに当りて誰か望郷の情なきを得んや。されど歳月の久しき初念漸く薄く郷夢稍々(やや)稀になりゆき本を忘れて末に馳せ苟且(こうしょ)因循して、一日の生を偸(ぬす)み、父祖の至情に乖(そむ)くこと豈痛ましからずや。今汝等情願して旧産を回復せんと欲せば須らく全村力を協せ各戸相戒め猛然精力を出し、時に及びて荒蕪を除き予め火災を防ぎ又屋宇を修理し然して後に農畝(のうほ)に従事すべし。これ孝にして仁なる道なり。汝等この道理を暁(さと)りその鎌を磨(と)ぎその索(なわ)を綯(ゆ)ひ速に往きて事に就け。其の苅り取る所の茅葺は我れ時価に準じて買ひ取りそれぞれ銀両を交付せん。」 尊徳は努力に報いるため、時価でカヤを買取り、青木村の屋根の葺替えに使うと提案し、怠惰の心を勤労の心に変えようとする。尊徳は教諭する。「前日の懶惰も汝等なり今日の勉強も汝等なり。一人にして其の黒白の如きは勤むると惰るとの二つにあり。善悪貧富盛衰存亡皆此の如くならざる者無し。故に富道を行へば必ず富み、貧道を行へば必ず貧し。唯(ただ)邑民行に由りて禍福吉凶の差あり。今旧来の懶惰を改め、斯の如く尽力し永く勤動を失はざれば、邑(むら)の再興何の難きことか有らんや。」 さらに青木村の遠い将来の災厄時の対策にまで及ぶ。尊徳は数百年先まで見通し、具体の対策を示す。「今、汝等子孫の為に之を計るに、今後若し水害に逢ひ、田畝(でんほ)変替して、頓(とみ)に水利を失ふ如きあらば水田を去りて、陸田に就くに如(し)かじ。(略)たとひ凶年飢饉に遭遇することあるも、必ず凍餒(とうたい)の患なかるべし。」 最後に尊徳は「以徳報徳」で青木の民に説諭する。 「『徳を以て徳に報ゆ』。地に俯して穀を播(ま)けば必ず生ずるに穀を以てし、天に向て善を種(う)うれば必ず酬(むく)ゆるに善を以てす。天地虚(むな)しく受けず。必ず之を返す。」 地に種をまけば穀物が生ずるように、天に向かって善をまけば、天は必ず善で報いると。報徳とは、天地の道理に基づくものにほかならない。 「予の孜々(しし)として、人の為にして毫(ごう)も自家の損益を計らざるは、特に以て天地生々の徳に報いんとするなり。」 私(尊徳)が人のために行い、少しも自分の損益を考えないのは、天地生成の徳に報いようとするものだ。これが報徳即ち『徳を以て徳に報ゆ』である。 人が自分の利益のためだけに生きるならば、それは鳥獣の道である。人類のため、後の世代のために努力し続けることが、人としての道である。 「予の方を地方に立つるや、本村を以て首となしぬ。・・・内は本村の為に恩義を達し、外は他村の為に模範を垂る。」 尊徳が仕法を他領に及ぼしたのは青木仕法が始めであり、その成功は他領の仕法の模範となる。 「願わくは青木村を、仕法を立てる模範となし、諸村をして、荒蕪を開き、負債をあがない、窮乏をたすけ、生業を起す等、青木村のごとくならしめんことを」と願う。実に青木村仕法は、諸村における報徳仕法の模範として組み立てられているのである。 以下「報徳本教・青木村治蹟」の現代語訳を試みた。また本集「資料編」に吉襄氏の「青木村治蹟」の読み下し文を載せた。専門的研究には「斯民」原文を参考にされたい。 令和4年5月8日現在 「報徳記を読む」第二集ー報徳は精神改革であるー 全ルビ付原文、現代語訳、参考資料 (2014年11月28日発行) 国立国会図書館 都道府県立図書館 北海道、秋田県、岩手県、山形県、宮城県、福島県、茨城県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、長野県、山梨県、富山県、石川県、愛知県、三重県、京都府、和歌山県、兵庫県、島根県、岡山県、徳島県、福岡県、長崎県、佐賀県、熊本県、鹿児島県 鹿児島県奄美、沖縄県 市区町村立図書館 図書館 (北海道)17館 札幌市、江別市、富良野市、北斗市、帯広市、北広島市、恵庭市、北見市、釧路市、根室市、比布町、様似町、京極町、美幌町、八雲町、別海町、佐呂間町、 (青森県)4館 青森市、八戸市、十和田市、五戸市 (岩手県)8館 盛岡市、奥州市、花巻市、遠野市、二戸市、大船渡市、久慈市、金ヶ崎町、 (宮城県)3館 石巻市、名取市、加美町 (福島県)9館 郡山市、相馬市、いわき市、会津若松市、喜多方市、本宮市、南会津町、三春町、新地町 (栃木県)6館 足利市、日光市、栃木市、真岡市、那須烏山市、鹿沼市、 (茨城県)4館 ひたちなか市、筑西市、常総市、八千代町 (群馬県)2館 館林市、渋川市 (埼玉県)1館 所沢市 (千葉県)2館 市原市、流山市 (神奈川県)14館 横浜市、藤沢市、秦野市、相模原市、小田原市、小田原市立小田原駅東口図書館、厚木市、大和市、海老名市、平塚市、伊勢原市、大磯町、逗子市、二宮町 (新潟県)3館 五泉市、新発田市、南魚沼市 (長野県)1館 白馬村 (静岡県)11館 静岡市、浜松市、下田市、磐田市、袋井市、三島市、御殿場市、掛川市、菊川市、焼津市、森町 (富山県)3館 富山市、滑川市、黒部市 (石川県)3館 金沢市、加賀市、羽咋市 (福井県)1館 あわら市 (愛知県)3館 名古屋市、岡崎市、新城市 (京都府)1館 南丹市立図書館 (大阪府)1館 大阪市 (兵庫県)3館 姫路市、三田市、赤穂市 (島根県)1館 松江市 (山口県)1館 防府市 (香川県)2館 善通寺市、観音寺市 (高知県)3館 土佐市、南国市、いの町 (愛媛県)2館 西条市、今治市 (大分県)1館 臼杵市 (熊本県)3館 上天草市、水俣市、人吉市 (宮崎県)4館 宮崎市、都城市、小林市、日南市 (鹿児島県)6館 薩摩川内市、指宿市、日置市、姶良市、霧島市、与論町 (沖縄県)1館 北谷町 💛「報徳記」の原文(全フリガナ付き)を輪読してみませんか? 第2集、第3集は絶版ですが、第1集は手持ちが少しありますので、読書会等で「報徳記」の原文を輪読されたい読書会等がありましたら、上記の公共図書館に寄贈し蔵書となっている本(「報徳記を読む」第1集)の奥付に連絡先のメールアドレスが載っていますので、ご連絡ください 池のはたででスロースクワットをしようと奥に行くと鳥が二羽飛び立つ。 カワセミ、今年始めて見た。 ラッキー。 近くで蓮の華の写真を撮っている年輩の女性に小声で声をかけて招き寄せる。 「まあ、ありがとうございます」そっとその場を離れる。 「喜びを人に送りて自らを虚しくはする」と女人観世音にある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年07月24日 08時44分45秒
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