テーマ:方言あれこれ(70)
カテゴリ:言葉のこと
このあいだの「ユキコ」の記事に虹の木313さんからいただいたコメントに「レイコー」の事があるんだ。
”アイスコーヒーを関西では「レイコー」と言うんでしたっけ?” って、おっしゃられたんだけど、「レイコー」は死語だと思う。 方言も、どんどん死語になってしまう言葉があるんだけど、ある時期に有名になってしまった方言というものは、その土地では忘れされてしまっても、知識としては日本中にずっと生き延びるって事があると思う。 いわば「方言死語」だね。 で、レイコーという言葉が大阪ではいつ頃まで使われてたのだろうかと考えてみて思い出した事があるんだ。 僕がスノボを始めた頃だから15年ぐらい前だったと思うけど、長野県の松本市で面白い出来事に遭遇した事があるんよ。 松本駅からほど近い、おみやげ屋さんの2階にある喫茶店での事なんだ。 僕のテーブルは中二階のような場所にあり、そこでウェイターさんに 「アイスコーヒーを二つ」って注文したんだ。 その席からは吹き抜けの1階の厨房入口が見えるんよね。 ウェイターさんが階段を下りて厨房入口で奥に向って 「レイコ、二つ」って言ったんよ。 この「レイコ二つ」には、椅子から滑り落ちそうになるぐらいにびっくりしてしまって、連れたちも、確かに「レイコ2つ」って言ったのを確認してる。 その頃、大阪では、すでに誰も「レイコー」とは言わなくなってたんよね。 この事で、二つの事が分かるんよね。 一つは、大阪で「アイスコーヒー」の事を「レイコー」と普通に言ってたのは、15年前よりもずっと前、きっと20年ぐらい前以前だろうって事。 二つ目は、15年ぐらい前に長野県松本市では「アイスコーヒー」の事を「レイコー」と言っていたのかもしれない、少なくとも一つの喫茶店内では使われてたって事。 でね、僕この「松本レイコ事件?」から柳田国男博士の方言周圏論を思い出すんよ。 柳田国男博士という民俗学者が、昔「かたつむり」の方言の分布を『蝸牛考(かぎゆうこう)』という本の中に書いたんよね。 これは京都で生まれた言葉が長い年月と共に京都から遠い場所へと移動して行くってものなんだ。 で、京都の言葉が遠くに伝わる頃には、京都では、すでに違う言葉を使ってる、みたいな事がある。 だから九州と東北に、おんなじ言葉があったりするんよね。 つまり京都を中心にした同心円上におんなじ言葉があったりするって事なんだ。 この事は、たくさんの言葉で、実際にそうなってる事が分かってるらしい。 現代は電波があるし人の移動は高速だし頻繁だから、昔のようにゆっくりと土地から土地に言葉が伝搬するっって事はおこってないだろうけど、昔はのろのろのろのろと伝わって行ったんだって! なんでも、その伝わる速度は平均で一年に910m進むスピードなのだそうだ。 現在では、そのスピードは意味をなさないだろうけど、言葉が飛火して、方言も飛火して、そこここで生き残ってるけど、元の土地では使われなくなってる、みたいな事があって、方言周圏論じゃぁないけど、方言飛火みたいな事はいっぱい起こってるのかもしれないって思う。 だけど、旅をよくする人だと、方言の飛火ってのは、体感した事があるんじゃないかと思う。 ほらっ!松本清張さんの『砂の器』では東北弁が中国地方(出雲だったっけ?)に飛火してるって事が事件解決に繋がったでしょ。 ああゆう事ってけっこうあるけど、短い旅では”気のせい”みたいにしか思わなくて本当の事はなかなか分からないんよね。 昔、伊豆半島で岡山弁を使う人たちが居てびっくりした事があって、いろいろ調べたんだけど、半島は海に突き出してるから遠方から海を伝って移動してきた人たちが移り住む事が多くて、半島ではそういう事がしばしば見られるって事しか分からなかった。 今だったら、ネットでそういった事も分かるのかもしれないなぁ。 伊豆半島で岡山弁を使う人とか、松本市でアイスコーヒーの事をレイコって言う人とかの事を知ってる人が居たら教えて欲しいな(^_-)-☆ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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