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ぜんちゃんの風に吹かれた日々

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バルナバぜんちゃん

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2008年05月12日
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カテゴリ:ライフスタイル
郵便局の中央テーブルで郵便番号を調べていたら対面にとても小柄でチャーミングな女性がやってきた。
あれ?誰だっけな?
ボクは絶対にどこかで会っていると思った。でも思い出せない。
彼女は小包を出し終えると一瞬ボクの顔を見ると直ぐに局から出て行った。
ボクは車に戻ってまた考えた。
絶対にどこかで会っている。でもやっぱり思い出せない。
しかし車を動かし始めたとき突然思い出した。
それは某総合大病院の医師だったのだ。

以前ボクは過度のストレスで神経症を患った事がある。
そして不動産の仕事から一時期リタイアして清掃関係の仕事に身を置いていた。
その現場がその某総合大病院だったのだ。

聴診器を首からぶら下げたそのちっちゃな先生と初めて病棟の廊下ですれ違ったときボクは眼を疑い振り返ってしまった。
患者のコスプレ?失礼な話、中高生ぐらいに見えたのだ。

程よくしてその先生を病棟以外でも度々見かけた。
眼が合えば軽く会釈もした。
病棟清掃のオバチャンと話題にもなった。
「子供みたいにちっちゃくて可愛い先生ですよねえ」
ボクが嬉しそうにそういうとオバチャンがボクの肩を小突きながら小声で言った。
「うんにゃ、それがなかなかしっかりした怖い先生なんだぞい。人は見かけに寄らないもんだで」

6年ぶりに郵便局で見たその人は背丈は変わらなかったが素敵な大人の顔をしていた。
この6年ボクはいろんな道を通ってきたようにその人もまたいろんな道を歩いてきたんだろうな。
あのとき言葉を交わす機会がなかったものかと今更ながら悔しがった。

先月、地元のライヴハウスで加川良さんのコンサートがあった。
会場に入ると知り合いがたくさん来ていた。
とある文化団体の仲間や高校時代の演劇部の先輩も来ていた。

休憩時間、トイレで用を足していると隣りの人がボクの顔をじっと覗くと声を掛けてきた。
「○○町出身ですよね?」「は?そうですけど何か?」
「あたしも○○町なんですよ」「あ、そうですか。で何か?」
「十数年前、微温湯温泉に行く途中の別荘地で焼肉パーティーやったことがあるんですけど来てましたよね?」
ドキッとした。確かにボクは行った覚えがあった。
そのオジサンは続けて言った。
「なんか歌ってましたよね。わたしも歌いたかったけれど酔っ払ってダウンしてしまいましてね…」
なんだ?この人は酔っ払ってダウンしながらボクを見ていて憶えていたというのか。

どこかで誰かが見ている。
あの日、ちっちゃくて可愛い大病院の先生を見つめているボクをまた誰かが見つめていたのだろう…。

ほんとにどこかで誰かが見ているんだよね。





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最終更新日  2008年05月13日 02時10分03秒
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