カテゴリ:本
港町食堂 奥田英朗の本を読み終える。抱腹絶倒の旅行紀だ。その旅行記で気にいった文章があった。『だいたい「生きがい」だの「自分探し」だと言うのは、現代病の一種である。「みんなが主役」などとマスコミが甘言をささやいた時点で、人は新手の悩みを抱えるようになった』
その後「学徒出陣の記録」を読む。色川大吉の記述にこんな文章があった。 「死を前にしても自由が無いという事が、飢餓感をいっそう望みのないものにしている」 「飢えの前では性欲なんて贅沢な本能だ」 「人間をギリギリに追いつめるもの、徴兵検査で人間を四つん這いにさせ人間の尊厳を失わせる」 「飢えに追い詰められたとき人間がどんなに下劣にあさましくなるのか。それを見た人間は人間の尊厳をどう信じたらいいのか」 改めて感じた。生きがい」だの「自分探し」だと言うのは、飢えの前では考える余裕すらないんだと。贅沢な現代病の一種なんだと。 港町食堂はとにかくたべまくる紀行文である。飢餓と飽食は相いれないものである。ゆえに人間の尊厳を奪いつくす飢餓に対して底知れぬおそろしさを感じた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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