還元不可能なところまで汚染された地球の叙事詩。
外来語も野生動物もインターネットは死に絶え、死ねない身体を授かった老人たちが若い子供たちを養うようになったある島国では、鎖国制度が復活している。
この世界はたぶん私たちがもたらした未来、いや違う、恐らくは現在の姿だ。頭をかち割られた原発という名前の怪物の怒りは、この先何千年、近寄る人間の肌を焼き続けるだろう。
本を閉じたら、モヤモヤとした暗い空から、数百冊の辞書が、ドカドカと頭の上に落ちてきた。痛い。痛い痛い痛い。停まれ。頼むから。じっと我慢する。涙が出る。
【中古】 献灯使 /多和田葉子(著者) 【中古】afb